ダサいのがバレたから、偽カノすることになった 4th【及川徹】

111話 ページ7

しょうがねえ、言ってやるかと足を進め、花園さんの真正面に来た。

靴が体育館の床と擦れる音がした。
その音に花園さんが反応する。


「花園さん」

「っ！な、なんですか」


名前を呼んだだけで、警戒されてしまう。
私そこまで怖いことしてないよね？何故？



「貴女今日、見学しに来たんだよね？自分の立場わかってる？」

「どっ、どういう意味ですか！」

「見学の人ごときに練習の時間を削ぎたくないって言ってんの。

自己紹介の時間は仕方ないとして、言い合い(・・・・)の時間は要らないんだよ分かる？

確かに、クソだのうんこだの性格悪いだの悪口は言ってたかもしれない」

「後半2つ言ってないだろ」

「そういう風に思ってるってことか」

「ドンマイ及川」

「励ます気無いでしょ！？」

松川君、岩泉君、花巻君、及川の順で話す。
はじめの3人はいいとして及川がうるさい。


「ちょっとうるさいんだけど？？

……でも、こんな会話はさっき及川が言ってた通りいつもしてる事だよ？

花園さんが入部すると考えて、今みたいな事を花園さんは毎回毎回言うの？」

「っわ、私はダメだと思ったから注意しただけでっ……！」

目尻に涙を浮かべ俯く花園さんに、そのまま話し続ける。

「皆、バレーしたいんだよ。
10月の終わりには代表決定戦が控えてる。大事な時期なの。

皆の時間を割くなら、今日はもう帰るかほかの部を見学してくれる？」

「っ……」

床にぽたぽたと涙が溢れる。
ええ……拭くの私なんだけど。





花園side


どうして……？


ダメだと思ったらちゃんと言わないといけないって小学校の時も中学校の時も言われたからそうしただけなのに……っ！


魅鳥先輩怖いよ……っ！
篠崎先輩だってさっきの紹介の時、笑ってなかったしっ！


怖くて、皆の前で言われたことが悲しくて涙が溢れる。
拭いても拭いても涙は止まらない。


顔をあげたら皆困った顔をしていて、気づいたら私は体育館を飛び出していた。


「うっ、ふっ、ふぇぇえん」



中庭のベンチに座り、思いきり泣く。

きっと誰か迎えに来てくれるよね……？


そんな、小さな期待を胸に。

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