ダサいのがバレたから、偽カノすることになった 4th【及川徹】

130話 及川side ページ26

にこりと笑った彼女には、今は恐怖しか感じない。


「……ここに呼んだ、用件って何？」

「とおる先輩は分かっているはずですよ？

……私、アレがファーストキスだったんです。あんなのが初めてなんて嫌なんですよ」

ちゃんと先輩の意思がないと、となにか企んでいるような笑みに顔をこわばらせる。


「しないよ、そんなの。俺は好きな子いるしそんなことできな」

「魅鳥先輩ですよね？魅鳥先輩にばらされたくないんじゃないんですか？とおる先輩は」


声のトーンを少し落とした。

花園ちゃん(コイツ)付き合ってるのを知ってて今させようとしているのか？
やばい性格終わってる……。

確かにばらされたくはないけど、キスするのも嫌だ。
だから黙っていると、顔をずいっと近づけられ反射的に1歩後ろに下がる。

「先輩はばらされたくない、私はキスしてほしい。利害の一致はしているんじゃないんですか？」

「何言ってんの。しないって言って……」

「バラされてもいいんですね？じゃあ。魅鳥先輩怒っちゃいますね」

「Aちゃんは信じないよ」

ふふっと不敵に笑う花園ちゃんの口車に乗せられないよう、慎重に応えていく。

「分からないですよ？先輩最近魅鳥先輩の事避けてるじゃないですか。ちょっと疑われてるんじゃないですか？」


……あ、そうか。

そうだよ。俺、最近Aちゃんのこと避けてたじゃん。あからさまにわかりやすい嘘ついて｡

たとえバラされたとして、弁解しようとしても信じてもらえないかもしれない。


つまり、黙ってて貰うしかないってことだ。



「本当に黙っててくれるんだよね？」

「私を疑うんですか？ちゃんと黙ってますよ。
してくれるなら、ですが」

「すればいいんでしょ」

ゆっくりと近づいて、頬に手を添える。

「……はい」

目も語尾もハートになっている花園ちゃん。

触れるだけ。したうちに入らない。大丈夫。
見られてなきゃ大丈夫……

そう思っている時、扉の方からガタッとした音が聞こえた。
5センチくらい空いている隙間から見えたのは



「A、ちゃん……」



あ、やばい。

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