ダサいのがバレたから、偽カノすることになった 4th【及川徹】

129話 ページ25

朝練が始まって10分が経過したところで、遅れて花園さんがやってきた。

「おっ、遅れてすみませぇんっ！」

「……おい、遅いぞ。寝坊か？」

「うっ、岩泉せんぱいっ……！そんなに怒らなくても……っ」


確かに岩泉君はちょっと目つきは鋭いし、怒ってるように見えるかもしれない。
でも、注意してるだけだし言うほど怒ってないし遅れて来た理由も言わないしそこら辺なってないと思う。

目尻に涙をためる花園さんにオロオロする岩泉君を可哀想に思ったのか、及川が花園さんに話しかける。


「花園ちゃん、まず遅れて来た理由を言わないと……。岩ちゃんだって怒ってるわけじゃないんだしさ」

「うっ……はぁい。えぇと……来る途中で迷子の男の子がいて助けてたんですぅ……」


及川の言うことにはすんなり答える花園さんに少し(じゃないけど)イラつく。

ていうか、この時間に男の子っているか？しかも迷子。そんなに土地勘がない子っている？

花園さんの理由に皆が疑ったが、そんなことを感じない花園さんは頭に“？”を浮かべている。


「そう、なの……。とりあえず、ジャージに着替えてマネ業しようか」

「わかりましたぁ。……あ」

「？」


花園さんは苦笑いの及川の横を通り過ぎ、更衣室に向かった。ただ、通り過ぎている時になにかボソッと言っていた。

少し不思議に思ったけど、気にしないでおいた｡

花園さんがいなくなった体育館は少しざわつく｡

そんな空気を変えるように及川が声がけをすると、皆また練習をし始めた。


.


及川side


「お昼休み、あの空き教室に来て下さい」


通り過ぎる時に、語尾にハートを付けたような甘ったるい声でボソリと呟く花園さん。

「あの空き教室」とは、昨日のキスされた場所だろうか。他に考えられないけど……。

行かなかったら、Aちゃんに何を言うか分からない。だから、行くしか選択肢は無い。



不安と焦りを感じながら授業はあっという間に過ぎていく。


岩ちゃん達にお昼を誘われたけど、用事があるからと断り、空き教室に入る。


やけに蒸し暑いそこで待っていると、静かにドアを開け、花園ちゃんが入ってきた。



「来てくれましたね、とおる先輩」



.

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