お食事 ページ17
その日の週末
彼と久しぶりの食事だった。
「なんか、結婚前とは思えないほど会ってないですよね笑」
『うん。』
今日の彼はなぜか元気がない。
いつもはもっと明るく喋ってくれるのに…。
どうしたんだろうと思いながら
お互い仕事のことは干渉しない主義だから
それには触れずに、
でもなんとなく気まずくて
そのまま喋り続ける。
「あっ、そういえばウェディングドレス、結局一番最初のやつにしたんです。
あのー、有名なブランドが手掛けてるやつ！
覚えてます？」
『…Aさん。』
「はい。」
『Aさんにとってこの結婚はビジネスですか。』
「…え？」
『僕は、正直ビジネスなんです。
だから、好きな人はいたし…。』
「…はい。」
『でも、Aさんのそういうのは聞いたことないですよね。
Aさんについてもっと教えてもらえませんか。』
「えっ、あ、はい。」
『Aさんは
、過去で一番、これ以上にないくらい
好きだった人っていたことありますか。』
「…はい。」
当然、私の中に思い浮かんだのは安田さんだった。
『じゃあその時、自分を犠牲にしてでも守りたいとか
隣にいたいとか思いました？』
「うーん、自分犠牲にしてっていうのあったけど
隣にいて独り占めしたいとかそんな風には思わなかったです。
私の場合、会って喋ってくれるだけで幸せだと思ってましたから。」
『…そうかぁ、参ったなぁ。』
「…え？」
そういう彼は苦笑いをしていた。
さっきから何が聞きたいのかわからなくて戸惑いながら
彼のいう通りに応えたものの今から結婚する2人が普通、
こういうことを喋るのものなのかと
戸惑いつつ運ばれてきたご飯を口に運ぶ。
『Aさん、』
もう一度彼が私の名前を呼ぶ。
パッと見ると彼があまりのじっと私を見つめてるから
ナイフとフォークを置いて私も彼と向き合う。
「はい。」
彼の言葉を待つ。
『結婚はやめにしましょう。』
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作者名：kameco | 作成日時：2018年10月27日 12時
