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今年の夏は、新しいことをしよう。
そう決めてずっとやりたかった飲食店の短期バイトに応募したのが夏休み前。
カフェのホールに採用されて、ようやく慣れ始めた1週間を終え、残すところあと2週間。
今日もバイトを頑張ろうと制服のエプロンを身につけて、頼まれたドリンクを運んでいる時だった。
「いらっしゃいませ」
先輩の声を聞いて同じ言葉を繰り返す__が、え。という声があまりにも聞き覚えのある声で、私は思わず振り向いてしまって
…見なきゃ良かった、なんてすぐに思った。
「Aさん…だよね?」
「………チガイマス」
そう言いつつも、だらだらと流れるのは冷汗。まずい、まずい。
まさかそんな、クロノア先生がここにいるなんて。
___私の学校は、校則としてアルバイトをしてはいけないことになっている。
そりゃもちろん、自分も把握している。
…ただ、周りの子も先輩も、それを無視してアルバイトをしていたから私もいっかなぁ…なんて甘えていたのだ。
その結果がこれ。そういえばこのカフェ、高校から1番近いカフェだったかも。なんてリサーチ不足。なんて失態。
私ははくはくと口を開け、何も言えず。
先輩にドリンク早く、と急かされたら動くしかない。
「あ…お待たせしました、カフェラテです」
ことん、と置いたカップの中のカフェラテは波を作る。
緊張と焦りで手の震えが止まらない。あぁ、最悪だ。どう言い訳しようか。
お客さんに小さく頭を下げてキッチンに飛び込もうと思ったけれど、すみません、の一言で立ち止まった。
「………ご注文ですか?」
「ふふ、はい。ブラックコーヒーひとつ。
ここ20時までだっけ、もしかしてラストまでいるの?」
「あ、はい…そう…ですね」
一瞬嘘をつこうかと思ったけれど、私が帰るタイミングまで居座る可能性を考えたら…素直に話すしかなかった。
こくりと頷くと、わかったとだけ言って本を取り出す先生。
……お説教コースかなぁこれ。
早くこの場から去りたい気持ちと、まだ終わって欲しくない気持ちがぶつかり合って仕方ない時間だった。
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かめそん(プロフ) - 羽鶴さん» いつもコメントありがとうございます…!ぜひ大人なkrさんを楽しんで頂けたらと思います! (4月1日 23時) (レス) @page1 id: e5672cfe47 (このIDを非表示/違反報告)
羽鶴(プロフ) - 新作だ…!大人なクロノアサさんまじかっこいいです!応援しています! (3月28日 1時) (レス) @page18 id: fcd2bda98b (このIDを非表示/違反報告)
かめそん(プロフ) - 紅茶さん» 今回も読んで下さりありがとうございます…!コメントくださって嬉しい気持ちでいっぱいです。紅茶様も体調には十分気をつけてお過ごしください! (3月26日 14時) (レス) id: e5672cfe47 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - 新作ありがとうございます!今回も気になる設定だし推しが先生だしでもう最高です!またかめそん様のお話が読めることを嬉しく思ってます!最近は花粉症がひどいらしいので気をつけてくださいね。 (3月24日 22時) (レス) @page15 id: 8df0b94832 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かめそん | 作成日時:2024年3月23日 20時