12限目 ページ12
・
もう終わった、そう思っていた。
「なんでまだあるの！」
「あははっ！平均点以上とったら終わりだって言ったじゃん！」
冷房の効く涼しい空き教室。
見慣れた机が2つ。
目の前にはクロノア先生が声を出して笑っている。
期末試験の結果、あの先生の話し方。全てが終わりだと思うじゃないか、ハッピーな夏休みがくると。そう思っていた。
「だって頑張ろうね、って！」
「( 補習を ) 頑張ろうね、ってことだよ」
「……言葉が足りないよ！」
げらげらと笑う先生に睨みをきかせるのも直ぐにやめて、あ"〜なんて女子とは思えない声を出しながら机に突っ伏す。
私の点数52点、平均点は68点。高いって……私にとっては高いんだってば。
「まぁまぁ、夏休みは毎日補習なわけじゃないし…ね？」
「………今頃みんなプールとか海とか行ってるんだろうなぁ」
「遠回しに言ってくるのやめてよ〜…」
先生の情けない声を聞きながら蝉の鳴き声に耳を傾ける。
いつもの授業後にあった補習はどこか不思議で、なんだか特別に感じたけど今はただただめんどくさいが勝ってしまう。だって今頃由香達は楽しく遊んでるんだもの。
「これ解いたらすぐ終わるよ、ほんと」
「ほんとかなぁ〜……あれ、枚数少ない」
「Aさんは初日あたりに補習を嫌がる節があるからね、ちょっと少なめにしたんだ」
先生は私の手元を見ながらそう言った。
そこまで優しくされたら甘えちゃうんだけど…
私だけじゃなく、彼も私の癖について把握していたらしい。
たった3枚のプリントを眺めて、私はペンを握った。
＿＿＿＿＿＿
＿＿＿
「激ムズじゃん！先生のいじわる！」
「あははっ！教える、教えるからっ！」
……前言撤回。全く優しくない。
いつものレベルが初級ならばこれは上級。
飛び級にも程がある。
穴がほぼ埋まらない解答欄とさっきよりも楽しそうに笑うクロノア先生をちょっぴり睨むと、今度は真剣に謝ってきた。
クロノア先生はその後、私の理解が遅くてもどれだけ時間が掛かっても全部の問題の解説をしてくれて。
やっぱり優しい、って少しだけ思ってしまった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かめそん(プロフ) - 羽鶴さん» いつもコメントありがとうございます…！ぜひ大人なkrさんを楽しんで頂けたらと思います！ (4月1日 23時) (
レス) @page1 id: e5672cfe47 (このIDを非表示/違反報告)
羽鶴(プロフ) - 新作だ…！大人なクロノアサさんまじかっこいいです！応援しています！ (3月28日 1時) (レス) @page18 id: fcd2bda98b (このIDを非表示/違反報告)
かめそん(プロフ) - 紅茶さん» 今回も読んで下さりありがとうございます…！コメントくださって嬉しい気持ちでいっぱいです。紅茶様も体調には十分気をつけてお過ごしください！ (3月26日 14時) (レス) id: e5672cfe47 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - 新作ありがとうございます！今回も気になる設定だし推しが先生だしでもう最高です！またかめそん様のお話が読めることを嬉しく思ってます！最近は花粉症がひどいらしいので気をつけてくださいね。 (3月24日 22時) (レス) @page15 id: 8df0b94832 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かめそん | 作成日時：2024年3月23日 20時
