全員悔しがって、情けなくて ページ23
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「あ、ぶない…って…」
怯む腕と、震える声。
………だめだ、だめだ、
ジワジワと広がる不安が、
さっき消えたばかりなのに、
どうして、
自分の気持ちが恐怖で文にならずに単語で流れ落ちていくのが分かる。
「な、んでですか…」
「っ……理由は分からないんだ、でもアイツはそう言ってた
止めよう、倒さなきゃ、って思ってた頃には意識がなくてさ…情けないよな、ほんと」
「そんなことっ…!」
「情けないんだ、ほんとに。
ずーっと尊敬してる人がさ、誰かに恨まれていて、殺されるって分かってさ、
じっとしてられるわけないし、むしろ俺が倒せたらって、
思ったのになぁ…」
震えた手で包帯が巻かれたお腹をさすっている彼を見て、何も言えなかった。
いや、言いたかった。
でも、何を言えばいいのか分からない。
神様でもないただの人間、しかも何を知ってる訳でもない一般人が、大丈夫っていう励ましも、悔しいよね、っていう同情も、なんか違くて。
同じスタンドにすら立てない自分が、酷く悔しい。
「だから、とりあえずともさんに伝えなきゃ…」
「私が行きます」
勢いで立ち上がると、畳の組まれている凹凸が足裏に刺さる。
狙われているのはともさん。
私が行けば、大丈夫だ。
それくらい、しなきゃ。
ぎゅ、と握る手のひらをみて、ぺいんとさんは少し俯いた。
「こんな…怪我してるとこ見せちゃってごめん…その…お願い、してもいいかな」
正直動くことすら難しかっただろう。申し訳なさそうに話す彼に、私は大きく頷いた。
「……あと、遅くなったんですが…怪我、私のせいで…ごめんなさい。
あの時ぺいんとさんが居てくれて、安心しました
……ありがとうございます」
あの時彼がいなかったら、きっと恐怖でどうしようもなくなっていたから。
親しみのあるぺいんとさんがあそこに居てくれてよかった。
そんなことを話せば、少し固まって、それから、
嬉しそうに笑ってくれた。
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かめそん(プロフ) - りあ@プリ小説してまーすさん» わ〜!お久しぶりです!!読んでくださってありがとうございます!!!嬉しいです!! (2023年2月9日 19時) (レス) id: e5672cfe47 (このIDを非表示/違反報告)
りあ@プリ小説してまーす(プロフ) - 浮上さぼってた間に完結してる!!!!お疲れさまでしたぁ!!!!夢主ちゃん幸せに爆発して…(?) (2023年2月8日 9時) (レス) @page48 id: 3b49f92543 (このIDを非表示/違反報告)
かめそん(プロフ) - らんのうんさん» コメントありがとうございます!個人的に難しい作品だったのでらんのうん様にそう言って頂けて嬉しい限りです。ありがとうございます! (2023年2月8日 0時) (レス) id: e5672cfe47 (このIDを非表示/違反報告)
らんのうん - 完結おめでとうございます!かめそんさんの作品は以前から拝見させて頂いておりましたが、今作は特にtmさんにドキドキしてしまいました…!これからも応援しています! (2023年2月7日 23時) (レス) @page48 id: 2fe057f917 (このIDを非表示/違反報告)
かめそん(プロフ) - えにさん» コメントありがとうございます!初めてがこの作品だとは……!嬉しいお言葉まで貰えて完結出来たかいがありました…!ありがとうございます! (2023年2月4日 16時) (レス) id: e5672cfe47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かめそん | 作成日時:2022年9月26日 19時