カメちゃん (ページ5)

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それから、先輩に写真を撮るときの極意についていろいろと教わった。

「よし、今日の部活終わり！」

『はい、ありがとうございました』

空はオレンジ色に染まりかけている。

先輩と屋上を後にした。

・

「カメちゃん、チャリ通やもんな？ほなここで。お疲れさん！」

『お疲れ様でした』

徒歩通学の先輩とは昇降口で別れ、私は駐輪場へ歩いていく。

駐輪場は自転車も人もまばらで、ほとんどの部活が早く終わっていたことが分かる。

神「あ、Aさん、お疲れ。」

神山くんは自転車を私の向かいに停めているから、自然と顔を見合わせることになる。

『お疲れ様』

リュックを自転車の前かごに入れて、スカートのポケットから取り出した鍵を自転車に挿す。

私より先にこの場にいたのに、神山くんは帰ろうとする気配がない。

『…帰らないの？』

そう口にすると、神山くんは少し嬉しそうに私と目を合わせる。

神「帰るんやけどさ、ちょっと喋りたいなぁと思って」

『喋る？…って、何を』

なるべく早く帰って課題を終わらせたい、というのが本音。

神「Aさん、一つ聞いてええ？」

『うん、いいけど…？』

何を聞かれる…？私がいつも一人でいる理由、とか？

神「…なんか、俺に冷たいから気になっててんけど」

『え？』

…思いもよらない質問だったけど、ここ数日の神山くんとの会話を思い出す。

確かに自分でも返しが素っ気ないと思ったことも、神山くんには“俺と話すの嫌？”なんて聞かれたこともあったかな…。

『…いや、全然冷たくしようとか思ってないけど、そう思わせる態度だったなら、謝る』

ごめん、と言う前に、神山くんが止めた。

神「そんなっ、謝ってもらおうとかやなくて、ただ気になっただけで」

『あぁ。…じゃあ、私も聞くけど、どうして私なんかに話し掛けてくれるの？』

神「え？笑そんなん、Aさんのことが気になるからやん」

私のことが、気になる…？

それは、一人でいる私が異質なものとして気になる、ってことだよね。

『そっか、うん、…じゃあ、私帰るから』

神「え？ちょっ…」

なんとなく、神山くんの顔を見ずにそこを離れた。

誰が見たって教室に一人でいるやつは異質物。

自転車を漕ぐ足が、いつもより重く感じた。