カメちゃん (ページ2)

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なんでだろう。

神山くんってクラスの中でも人気な男子なのに、なんで話し掛けてくれるんだろう。

女子と話したいなら、私なんかより他の可愛い女の子たちの方がいい気がする。

頭の中は変わり者の神山くんのことでいっぱいだった。

『ぁ…』

カメラ片手に、私の前を通り過ぎていく男子。

『あっ、あの！』

「ん？」

カメラだ、と思ってつい声掛けてしまったけど、写真部の人だよね？

早とちりだったら恥ずかしい。

「もしかしてやけど、写真部に入ってくれる子やったりする？」

『はい、』

「あー、えっと、三年の重岡っす」

第一印象、笑顔。

眩しい。夏の太陽…みたいな、パッとした感じ。

『私は、二年の、Aです』

「下の名前は？」

『A、ですけど』

「Aちゃんな？おっけ。あ、俺部長やってます。ま、詳しいことは後で」

“ついてこい”と言わんばかりに、クルッと方向を変えて歩き出す。

先輩は大股でどんどん進むから、私は歩いても歩いても追いつかない。

前を歩く先輩は振り向いてクスッと笑った。

「ごめんごめん」

わざわざ私のところまで戻ってきて、それから私の歩調に合わせて歩き始めた。

『すみません』

「ん？」

私の横でコテンと首を傾げる。

『歩くのが遅いので』

「ふふ笑別に謝らんくてもええの」

ポンポンと頭を撫でられた。

『…!?』

言葉も出なくて、首を縮こめるだけ。

先輩はなぜか照れた表情。

「あっ、いや、そのさ、可愛いなあと思って…」

『ぇ、』

普通、初対面の人の頭を撫でますか…？

先輩、変わり者…？

というか、私に向けて“可愛い”って…。

「Aちゃん」

『はい』

「カメちゃんって呼んでもええ？」

『はい？』

さっきから、この先輩のペースが掴めない。

「首引っ込めるとことか、歩くの遅いとことか、亀っぽいなって言うか、…あ、写真部に入るし、ほら“カメ”ラってことで」

今最後に言ったのは、こじつけ感がありましたが。

…でも、悪くはないかも、と思ってる自分がいる。

『カメちゃんでもいいですよ。』

「ほんま？ほんなら今からAちゃんはカメちゃんな？」

初めてつけられたあだ名、カメちゃんです。