track98 ページ48
「……忘れない内に、全員に言っておく」
ワイワイと話し始めた目の前の九人にそう言えば全員の視線が俺に刺さるも気にせずに口を開く。
「――――……類君の………類の言う通りだった。妹の存在に縛られて、俺ばかりが足を止めていた。……けど、もう分かった。彼奴は、俺の死を背負ってちゃんと向こうで立ってることも、俺が居なくてももう一人で生きていけることも……――――
――――…俺は生者で、血縁者こそはいないが、俺のことを大事に思ってくれる奴らが此処に居るってことを」
そう言って、多分笑えば全員が驚いた顔で俺を見つめたかと思えば、近くにいた冬弥に強く抱きしめられた。
「……そうだ、お前は…生きてるんだ、A」
「……嗚呼、悪い冬弥。やっと理解出来た、待たせて悪い」
グスグスと肩口で聞こえた泣いているような声にそっと背中と頭を撫でれば、他の子たちもゾロゾロと俺に抱き着いてきた。
「やっと気付いたのかよ…」
「うん！Aくんは、ちゃんと生きてるよ！」
「そうそう、まぁAが納得したならいいんじゃない？」
「フフ、気付いただけ良かったじゃないか」
「そうだぞA！お前は生きているんだ！」
「……あ、A笑ってる」
「本当だー！Aくんもわんだほーい？」
「Aお兄ちゃん、涙止まった？」
まるで団子と言うよりはおしくらまんじゅうのようになってしまっているが、多分今の俺は笑っている。嫌じゃない。
「――――……好きだ」
九人に抱き締められつつそう言えばバッと全員が俺の顔を見た。
……そう言えば好き、と俺が言ったのはこっちでは初めてかもしれない。
「お、お前…好きって言えたのか！？」
「さっきも言ったが俺以外には言うなよ、殴られるぞ」
心底驚いたように俺を見上げてワナワナと震えつつそう言った司にそう言う。
俺はまだ感情が無いからいいが、ある奴なら「失礼だ」なんて言って殴られるぞ。
「……好きなのは好きなんだが、まだお前らの好きと同じかは分からない。それに中身はとっくにいい歳なんだが…」
「「「知ってる」」」
「そ、そうか…」
俺が懸念していることを伝えれば全員に即答された。…俺よりも俺のことを知っている気がする。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 256人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れんちゃ - もういつの間にか数年もたっていたんだな…続きをずっと楽しみにしてるよいつかまた戻ってこねぇかな (5月27日 1時) (
レス) @page50 id: 98fe1eda88 (このIDを非表示/違反報告)
のなめ - 最高です (2022年12月23日 15時) (レス) @page50 id: 2b5e96f834 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - 好きです。続き楽しみにしてます! (2022年5月21日 18時) (レス) @page50 id: 0a8dc521f1 (このIDを非表示/違反報告)
nana民(プロフ) - あんまりGLって苦手なんですけど主様のは全然welcomeです (2022年4月11日 15時) (レス) @page33 id: 52a3fcc53d (このIDを非表示/違反報告)
錫也(プロフ) - キャラ同士のCP込のやつってあまり読まないんですけど、好き。主くんの考え方も好きだし、鋭くてそれでも好意を受け取らないとか、最後の最後にちゃんと自分っていうのを確立できたような、文才から何から優ですわ… (2022年2月18日 11時) (レス) @page50 id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：＠黒
| 作成日時：2020年11月23日 10時
