track93 ページ43
俺は女子でも無いし、どちらかと言えば話を聞いていることしか出来ないんだが。
(―――……だが、悪くは無いな)
ケーキを一口食べつつ、四人の話を面会終了時間まで聞いていた。
「―――じゃあ、また来るねAくん!」
「嗚呼、見舞いに来てくれてありがとう、寧々、えむ、杏、こはね」
「うん!また司くん達と来るね!」
「私達もまた彰人たち連れてくるね!」
「……じゃあ、またねA」
四人を見送って手を振っては小さく息を吐いてベッドに横になる。
……賑やかだ、けど嫌ではない。……寧ろ……―――
「―――……これが、楽しい……か」
多分推測の域でしかないが、恐らくこれが楽しい、そういう感情なんだろう。
少しずつ、少しずつ、ゆっくりと昔閉じた筈の蓋の隙間から零れ落ちてきたのか。
(と言っても、まだ受け止める器が出来ていない、気がする。)
零れ落ちてきた感情でさえも推測するしか受け止める方法が無い。
一々推測していたら幾らの俺でも疲れるだろう。
「……器を作るのが先決、か」
小さく呟いてスマホを手に取れば、今まで送られてきた写真を眺める。
彰人君の写真も、司君の写真も皆笑っていて楽しそうだ。
…………胸の辺りがむずむずする。
他の写真を見れば何か掴めるんだろうか。
『何かお前らの可愛い写真をくれ』
少し考えてから、彰人君と類君にメールを送った。あの二人なら何か持ってそうな気がする。
メールを送って一分も経たないうちにメールが一つ返ってきた。
彰人君らしい、早いな君は。
『突然なんだよ』
その短い文面に似合わず、大量に写真を送ってくれた。
これはこはねちゃんと冬弥君がゲームセンターで遊んでいる写真、こっちは…杏ちゃんと彰人君がライブの時の写真か、他にも沢山写真がある。
………なんだか、いいな。
今ならいい曲が書けそうな気がする。
そんなことを考えていると類君からもメールが返ってきた。
『こんな感じでいいのかな?』
そんな文面と送られてきた写真に目を通す。
多くは俺の家に前泊まった時の写真だった、いや寧ろその写真しかない気が…いやステージの写真もあった。
俺の家のリビングでアイスを食べてる四人の写真やステージの練習の合間に撮ったらしい写真、どれも楽しそうで可愛らしい写真ばかりだ。
……この、胸のむずむずはいつか分かるんだろうか。
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れんちゃ - もういつの間にか数年もたっていたんだな…続きをずっと楽しみにしてるよいつかまた戻ってこねぇかな (5月27日 1時) (レス) @page50 id: 98fe1eda88 (このIDを非表示/違反報告)
のなめ - 最高です (2022年12月23日 15時) (レス) @page50 id: 2b5e96f834 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - 好きです。続き楽しみにしてます! (2022年5月21日 18時) (レス) @page50 id: 0a8dc521f1 (このIDを非表示/違反報告)
nana民(プロフ) - あんまりGLって苦手なんですけど主様のは全然welcomeです (2022年4月11日 15時) (レス) @page33 id: 52a3fcc53d (このIDを非表示/違反報告)
錫也(プロフ) - キャラ同士のCP込のやつってあまり読まないんですけど、好き。主くんの考え方も好きだし、鋭くてそれでも好意を受け取らないとか、最後の最後にちゃんと自分っていうのを確立できたような、文才から何から優ですわ… (2022年2月18日 11時) (レス) @page50 id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:@黒 | 作成日時:2020年11月23日 10時