検索窓
今日:5 hit、昨日:9 hit、合計:106,729 hit

track90 ページ40

『分からなければ、聞いてみればいい』

ピコンと小さく音を立てて表示されたメッセージに返事を打たずにじっと見つめる。

……聞いてみる、か。

聞いてみると言っても、一体誰に聞けばいいん………あ。



「―――…もしもし?」

「Aか?どうしたんだ、まさかまた何か…!?」

「少し、頼みがあるんだ司君」

電話帳を開いて司君に電話を掛ける、思い当たる、というか答えに近そうな人を一人知ってる。


「――――今度、咲希ちゃんも連れてきてもらえないか」

「咲希を?それは構わないが…何かあったのか?」

「いいや、俺が少し聞きたいことがあるんだ。出来れば直接が良い」

そう言えば「分かった!咲希に聞いてまた見舞いに行くぞ!」と快く了承を貰ってから電話を切る。


(…俺が知る限りで、一番妹に近いのは咲希ちゃんくらいだ。…何か、ヒントでも掴めればいいんだが…)

小さく息を吐きつつ携帯を枕元に置いてそっと目を閉じた。




「Aくーん!わんだほい!」

「相変わらずか鳳」

次の日、女子四人がやって来たのはいいが開口一言目が全くぶれないなこの子は。


「元気なのはいいが、病院では静かにな」

「はーい!」

…聞いているのかいないのか、後ろで寧々ちゃんが小さくため息をついていた。

苦労してるんだな、寧々ちゃん。


「界世くん、傷大丈夫…?」

「嗚呼、寧ろ『何故動けたんだ』と聞かれた」

「あはは…抜糸前にあんなに動いたら傷も開くに決まってるじゃん」

心配そうなこはねちゃんに小さく首を振れば杏ちゃんが苦笑を零した。

寧々ちゃんがそっと近寄ってきたかと思えば俺の額にデコピンをした。


「……痛い」

「痛くしたの。……もう、無理しないで」

デコピンされた額を片手で擦っていると俺の片手を両手で握って小さく啜り声が聞こえてきた。

泣いているんだろう、か。額を擦っていた片手で顔を伏せた寧々ちゃんの頭をそっと撫でる。

俺は、分からない。俺のことだが愛してるかなんて分からない、だがこの子たちに大事にされて、心配されて、恐らく愛されているんだろうな、とは、なんとなく今の俺には分かる気がする。


「……まだ、許してないから」

「似たことを言われたな」

そう言いつつ首元に抱き着いてきた寧々ちゃんの頭と背中を優しく撫でる。

そう言えば、結局彰人君からも許してもらえてないんだがどうやったら許してもらえるんだろうか。

track91→←track89



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (152 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
256人がお気に入り
設定タグ:プロセカ , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

れんちゃ - もういつの間にか数年もたっていたんだな…続きをずっと楽しみにしてるよいつかまた戻ってこねぇかな (5月27日 1時) (レス) @page50 id: 98fe1eda88 (このIDを非表示/違反報告)
のなめ - 最高です (2022年12月23日 15時) (レス) @page50 id: 2b5e96f834 (このIDを非表示/違反報告)
- 好きです。続き楽しみにしてます! (2022年5月21日 18時) (レス) @page50 id: 0a8dc521f1 (このIDを非表示/違反報告)
nana民(プロフ) - あんまりGLって苦手なんですけど主様のは全然welcomeです (2022年4月11日 15時) (レス) @page33 id: 52a3fcc53d (このIDを非表示/違反報告)
錫也(プロフ) - キャラ同士のCP込のやつってあまり読まないんですけど、好き。主くんの考え方も好きだし、鋭くてそれでも好意を受け取らないとか、最後の最後にちゃんと自分っていうのを確立できたような、文才から何から優ですわ… (2022年2月18日 11時) (レス) @page50 id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:@黒 | 作成日時:2020年11月23日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。