track87 ページ37
――――………俗世間に、前世の俺と妹は『可哀想な子供たち』だった。
俺の母さんが世に言う大女優、父さんは有名な作曲家だった。
そんな俺達の両親は、俺がまだ五歳の頃に亡くなった。
なんてことは無い、妹は他の友達の家に泊まっていて無事で、俺は目の前で両親が死んでいくのをただ見ていることしか出来なかった。
よくある事件だった。頭の可笑しい人間が家に入って来て、俺は両親にクローゼットに隠れる様に言われて、何があっても出るな、と。
その結果、俺は両親が目の前で刺されて死んでいくのをただただ見ることしか出来なかった。
犯人は捕まったが、俺達は小学校に入る前に天涯孤独になってしまった。
親族の家に引き取られたが、その事件から俺は笑わなくなってしまった。
……いや、笑わないだけじゃない。
泣かなくなった、怒らなくなった、苦しくなくなった、楽しくなくなった。
俗に言う、『無感情』になってしまった。
俺に残っていたのは、唯一残された肉親の妹と、親が仕事道具として使っていた機材たち。
そして両親が俺に教えてくれた音楽と舞台、だった。
それから、俺は両親の伝手を使って舞台に立ち始めた。
と言っても期間はそこまで長くなく、数年程度で舞台を卒業した。
その後、俺は音楽の道に進んだ。
妹の学費を稼ぐために、父さんと母さんが唯一残してくれたものを、決して忘れないように。
……ただ、俺の中は欠けたままだった。
どう足掻いても、俺の中から欠けてしまったあの感情たちは戻ることは無かった。
その代わりという様に、他人の感情を良く感じ取る様になった。
それは色だったり、感触だったり、様々な形で俺の視界に映ってきた。
そうして、俺は30歳になった。
妹は友達が沢山できて、多分だが恋人も出来ていたんだと思う。
俺は相も変わらず一人だったが、それで良かった。
そして俺は、あの日……――――
「――――……妹をかばって、通り魔に刺されて死んだんだ。」
「……ま、待ってくれ……死んだ…？」
「………なら、何故…？」
俺の言葉に困惑したように首を傾げた二人を見れば小さく息を吐く。
「輪廻転生、だ。俺は成仏したいとそう言ったんだが、神様とやらは死ぬことを許してはくれなかった。……俺に、寿命100歳という制約を付けてな」
俺の言葉に類君が考え込めば、俺の顔を覗きこんだ。
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れんちゃ - もういつの間にか数年もたっていたんだな…続きをずっと楽しみにしてるよいつかまた戻ってこねぇかな (5月27日 1時) (
レス) @page50 id: 98fe1eda88 (このIDを非表示/違反報告)
のなめ - 最高です (2022年12月23日 15時) (レス) @page50 id: 2b5e96f834 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - 好きです。続き楽しみにしてます! (2022年5月21日 18時) (レス) @page50 id: 0a8dc521f1 (このIDを非表示/違反報告)
nana民(プロフ) - あんまりGLって苦手なんですけど主様のは全然welcomeです (2022年4月11日 15時) (レス) @page33 id: 52a3fcc53d (このIDを非表示/違反報告)
錫也(プロフ) - キャラ同士のCP込のやつってあまり読まないんですけど、好き。主くんの考え方も好きだし、鋭くてそれでも好意を受け取らないとか、最後の最後にちゃんと自分っていうのを確立できたような、文才から何から優ですわ… (2022年2月18日 11時) (レス) @page50 id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：＠黒
| 作成日時：2020年11月23日 10時
