track68 ページ18
「ええ…奇跡、としか……ひとまず脳にも問題はなさそうですので、明日検査を行ってからまた今後の治療について考えましょう」
「嗚呼、暫く世話になる」
信じられないといった様子で病室を出て行った医者にそう言えば入れ替わりに眠っていた類君がバタバタと走りこんできた。
出て行ったときは起きないようにと車いすに乗せて出て行ったが起きたのか
「っは……は……」
「病院は走る所じゃない、心配しなくても起きてる」
「……夢、じゃないよね…?」
「現実だ、まだ刺された背中が痛い」
フラフラと近寄ってきた類君に小さく手招きすればベッド脇にしゃがんだ類君の頭を撫でる。
ポツリと「…無理は、しないでくれ」と言う声に「悪い」と短く謝る。
「とりあえず、明日検査をしてその結果次第らしい。まぁ目は覚めたから山場は越えたと言ったところか」
「………君は、いつでも無感情なんだね」
毛布の上に頭を乗せては俺の左手を握ってポツリと呟いた。
ジワリと滲む感情の色。
「そうか、俺が怖かったか」
「………どうして先に言っちゃうかな」
見えたままに問いかければ毛布に埋めていた顔を上げて苦笑を零した。
「……そう、あの時の君は……怖かったんだ。何か、得体も知れない何かを見ている気がして…傷つけることを言って、悪かった」
「いい、分かっていた。それにしても得体も知れない、か……間違ってないな」
「……え…?」
死人だと、そう言ってレッテルを貼った、今は正体不明の俺。
得体がしれないと言われてもしょうがない気がする、それにそこまでショックではない。
「ところで、俺はあの事件からどれくらい寝ていたんだ」
「…ざっと一週間くらいかな」
「長い」
「それは僕のセリフだと言いたいね」
漸く少し調子が戻ってきたのか笑ってそう言った類君を見上げつつ「紙とボールペンをくれ」と頼めば暫くして持ってきてくれた。
「流石に五線譜は無かったけれど…これで良いかい?」
「天馬といい別に五線譜の裏じゃなくていいんだが」
何故あのボールペンと五線譜の裏にこだわるんだ、なんでもいいと言ったはずなんだが。
机の上でこの眠っていた間、向こうで考えて纏めておいたものを書きだしていく。
「類君、俺のスマホあるか」
「嗚呼、此処にあるよ」
机の引き出しを開けては俺のスマホを出した類君に「お前らのショーはどうなった」と問いかければキョトンとした顔をした。
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れんちゃ - もういつの間にか数年もたっていたんだな…続きをずっと楽しみにしてるよいつかまた戻ってこねぇかな (5月27日 1時) (レス) @page50 id: 98fe1eda88 (このIDを非表示/違反報告)
のなめ - 最高です (2022年12月23日 15時) (レス) @page50 id: 2b5e96f834 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - 好きです。続き楽しみにしてます! (2022年5月21日 18時) (レス) @page50 id: 0a8dc521f1 (このIDを非表示/違反報告)
nana民(プロフ) - あんまりGLって苦手なんですけど主様のは全然welcomeです (2022年4月11日 15時) (レス) @page33 id: 52a3fcc53d (このIDを非表示/違反報告)
錫也(プロフ) - キャラ同士のCP込のやつってあまり読まないんですけど、好き。主くんの考え方も好きだし、鋭くてそれでも好意を受け取らないとか、最後の最後にちゃんと自分っていうのを確立できたような、文才から何から優ですわ… (2022年2月18日 11時) (レス) @page50 id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:@黒 | 作成日時:2020年11月23日 10時