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荷物を持って遊園地から戻ってくれば、とりあえず手の傷を手当てする。
握り過ぎると血が出るんだな、そんなに強く握っていたか。
手当てを終えてパソコンを開けばニーゴから幾つか通知が来ていた。
Kからは出来上がったらしい曲のファイルが届いていた。
Amiaとえななんからは今の進捗の報告。
『@は、東京に住んでる?』
雪からは何故か住所を聞かれていた、何故住所なんだ。
『嗚呼、渋谷に住んでる』
短く返事を返せばKから届いた曲を聴きながら譜面を開く。
さて、この子たちの曲に俺が歌詞を付けられるんだろうか。
「駄目だな、これじゃない」
暫く構想を練ってみたが、どうにもしっくりくる歌詞が思いつかない。
俺と違って、この子たちの曲には色があるんだ。
俺の曲には無い、感情の色が。
(―――……これは、時間がかかるぞ)
長い道のりを察して小さく息を吐く、ただ途中で投げ出すことはしたくない。
やるなら最後まで、やり遂げなければいけない。
万年筆を握り直しては、俺は五線譜に向き合った。
『@、帰ってたんだね』
『嗚呼、昼前には戻ってた。それにしても住所を聞くなんてどうした』
夜になればニーゴのメンバーが次々とチャットに入ってきた。
『あ、そうそう!実は今度ニーゴの皆で遊びに行こうって話してて、@もどうかなって。渋谷だっけ?』
『言っとくけど、提案者は雪だからね』
『渋谷だが男だぞ』
女子に四人も囲まれて街中を歩くのは中々絵図としても……そうか見た目は高校生か。
『知ってる』
『四人が良いなら俺も構わないが、あまりネットで知り合った奴とは会わない方がいい』
『@は大丈夫、な気がする』
また確証もない断定をされた、俺にはそう思わせる何があるというんだ。
『―――じゃあ今度の土曜日に渋谷のセンター街で集合ね!』
『分かった、@もそれでいい?』
『嗚呼、それで構わない』
ニーゴと会う約束をしつつ万年筆を走らせる、がどうしても納得いく歌詞が書けない。
こんなに書き直しをしたのは久しぶりだ、ごみ箱に紙くずが山を作っている。
結局、納得いく歌詞が全く書けないまま眠りについた。
向こうは問題なく歌詞を書けているんだろうか、心配になってきた。
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れんちゃ - もういつの間にか数年もたっていたんだな…続きをずっと楽しみにしてるよいつかまた戻ってこねぇかな (5月27日 1時) (レス) @page50 id: 98fe1eda88 (このIDを非表示/違反報告)
のなめ - 最高です (2022年12月23日 15時) (レス) @page50 id: 2b5e96f834 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - 好きです。続き楽しみにしてます! (2022年5月21日 18時) (レス) @page50 id: 0a8dc521f1 (このIDを非表示/違反報告)
nana民(プロフ) - あんまりGLって苦手なんですけど主様のは全然welcomeです (2022年4月11日 15時) (レス) @page33 id: 52a3fcc53d (このIDを非表示/違反報告)
錫也(プロフ) - キャラ同士のCP込のやつってあまり読まないんですけど、好き。主くんの考え方も好きだし、鋭くてそれでも好意を受け取らないとか、最後の最後にちゃんと自分っていうのを確立できたような、文才から何から優ですわ… (2022年2月18日 11時) (レス) @page50 id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:@黒 | 作成日時:2020年11月23日 10時