わたし、メリーさん。いま、ストーカーされているの……。 ページ7
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すると突然あっきーが少し険しい顔をして、耳を澄ませだした。
あっきーがこの状態になった時は、僕らは出来る限り静かにして、あっきーが音を拾いやすいようにしなければならない。
カズもその事はよく分かっているので、口をつぐんであっきーから少し離れて見守った。
僕も耳を澄ませてみるが、あっきー程耳が良くない僕には何も聞こえない。カズも耳を澄ませていたが、カズにもやはり聞こえないらしく首を傾げていた。
数秒後、あっきーが口を開いた。
「……ヒロ。親父のこと心配してんなら、多分大丈夫だぞ。」
「……。」
じゃあ、僕が見たあの女の子は何だったのか。それに、それなら何故僕に隠れてあの女の子と話す必要があるのか。女の子の波打つ長い金髪が、脳裏にちらつく。
「親父、なんか喋ってる。ガキの声も聞こえる。多分、お前が言ってた金髪の奴。隠し子では無さそうだぜ。敬語で話してるし。歩いてるみたいで、どんどん音が遠くなってる。」
「本当にいたのかよ……。」と呟くカズ。僕のこと信じて無かったのか。
しかし隠し子では無いとなると、いよいよあの女の子の正体が知りたくなって来る。
「……あと、つけよう。」
「おう。」
「そうだな!」
そうして僕らは、父親と女の子の後をつけ始めた。側から見ると男子高校生三人(しかも今どき珍しい学ランの制服姿)が中年の男性と金髪の女の子を尾行している状態なのだ。しかしストーカーでは無い、決して。
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__水が何処かから滴り落ちる音が聞こえる。今日の天気は晴れだったが、昨日の夜に少し雨が降っていたので、屋根を伝った水が雨どいから滴っているのだろう。
ここは廃校になった小学校で、俺自身も、今年高校一年生になった息子も、かつてはこの小学校に通っていた。
「……。」
昨日に引き続き同じ階段に座り、隣にいるメリーさんを見る。
メリーさんは俺が話し出すまで何も言わず、待ってくれている。その間ずっと無表情だけど、その沈黙すらも俺は心地よく感じた。
しかし、昨日は終始無表情だったメリーさんが今日は少し険しい顔をしていた。
「どうかしましたか……。」
「……つけられてるの。」
その言葉に、思わず息を呑む。
「だ、誰に?」
思わず声が震えた。
「すぐ戻るの。」
メリーさんはそれだけ言うと、一瞬で姿を消した。
わたし、メリーさん。いま、あなたの息子を見つけたところなの……。→←わたし、メリーさん。いま、尾行の計画が始動したの……。
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AYA - 初めまして。私も怖い都市伝説の中ではメリーさんが一番好きです。このメリーさん、優しくてほっこりしてきゅんしますね。話もとても面白いです。無理がない範囲で更新頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月2日 18時) (レス) id: d783a40920 (このIDを非表示/違反報告)
麦カケ(プロフ) - 初めまして、こんばんは。メリーさんは怖いイメージですがこちらの作品のメリーさんは優しくてほっこりしました。お話とても面白いです!作者様のペース、無理がない範囲で更新等頑張ってください! (2021年2月2日 22時) (レス) id: ea0439ca7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍沢 | 作成日時:2020年12月30日 18時