愛しのあの子はドーナツ屋。 (ページ6)

今日:9 hit、昨日:21 hit、合計:222,046 hit

髪の毛。ページ6

Aside

出会ってからカタクリくんは本当に毎日あの丘に現れたし、決まって2人で海を見ながらドーナツを食べた。
私が作ったドーナツと、お父さんが作ったドーナツを持っていってもカタクリくんは私の作った方を美味しいと言って食べるのは少し擽ったい気持ちだった。

「A、なんでまた隠してるんだ。
俺との約束忘れたのか？」

『うっ、そう言われてもそんな簡単に習慣は変わらないし…。』

「よし、なら俺がくくってやる！ゴムもちゃんとあるから心配するな！」

『えっ、やっ！いいよカタクリくん…ちょっあのっ！いたーー！？』

ぐんと引っ張られた前髪は滅茶苦茶痛かったし絶対数本抜けたけど、カタクリくんは意外と器用で力加減を覚える頃には私の前髪はパイナップルみたいになっていた。

「よし、次もちゃんと髪上げてこなかったら俺がやってやる。」

『うぅ、分かったよぉほんとに君強引だね。』

「俺はAの目が好きだ、だからもっと見たい。」

『そう、海賊だから変わったもの好きなの？』

「そうじゃない、俺はAだからいいんだ。」

『…最近の子はおませさんだなぁ。』

「年そんなに変わんねぇだろ！！」

少し頬を染めて怒るカタクリ君がおかしくてつい笑ってしまうけど、確かに歳は2つほど彼が下なだけでそう変わらない。身長なんてカタクリくんは成長期らしくて私より少し高いくらいだし。

『そうだ、明日はうちに遊びにおいでよ。
お父さんがカタクリくんに会いたいって。』

「…俺は海賊の子だぞ？嫌がるだろう。」

『嫌がってるならわざわざ会いたいなんて言わないよ。変な気使わないでいいから、ね？』

そう言うとカタクリくんは渋い顔をしたまま頷いた。そんなに人の親に会うのは嫌なものだろうか？
私はあまり経験がないからわからないけど。

…でも私がカタクリくんのお母さんと会うとなったら同じ顔をしちゃうかも、緊張するもんね。