愛しのあの子はドーナツ屋。 (ページ41)

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彼は優しくない。ページ41

掴まれていた両腕が開放されたと同時にがくりと膝をつく、足は震えてるし腰は抜けるしでもう立てないの。

座り込む私の傍に膝を着いたカタクリ君は、顔を覗き込みながら顔に張り付いた前髪を撫でる。

カ「A、お前をそんな姿にしたのはこいつか？」

『そ、うだね…もっと痛くなるから、自分の格好見てないけど。』

カ「そうか…見つけたらどう叱ろうかと思っていたがそれだけ怯えていれば次は無いな？」

『っ当たり前でしょ、怖かったし痛いしっ！子供が捕まってなかったらこんなとこ来ないよぉ…！』

「お、おいおいおい！な、なんで、カタクリがこんな所に来るんだよ！
ここはお前らの目を盗んでやっと見つけた洞穴だぞ！？」

カ「俺だってこんな夜中に海沿いを駆け回る羽目になるとは思わなかったし、能力者の俺はここに来るのにも骨がおれた。」

叩かれて腫れているらしい私の頬を優しく撫でた後、ゆらりと立ち上がってカタクリ君は右手の槍を握り直した。

カ「Aを連れ去りさえしなければ、俺をここに呼ぶことも無くもう少し長く生きられたろうにな。
…俺は善人じゃねぇ、ガキがどうなろうと構わない。」

「な、なら見逃してくれよ！その女は返す！あんたの好きにしていい！！」

カ「話は最後まで聞け。ガキはどうでもいいがAが助けたいと言うなら俺は助ける。
それに、返す？違うな、もともとAはお前のものじゃない。俺のものだ。」

いえ、私は誰のものでもないです。などと茶化せる雰囲気でもなくカタクリ君は怒りの色に染まり、親玉を一突きしたあと部屋を出ていった。
引き摺られて行った男が永遠と悲鳴をあげるのを、遠くに聴きながらぶるりと震えた。

パ「Aさん！！大丈夫…？沢山血が出てるよ！？平気？…痛いよね。」

『ぐす、…ものすごく痛い。』

パ「だ、だよね！ごめんなさい…！僕らの代わりに
沢山いたい思いさせて。」

ピ「……私も、気味悪いとか、言ってごめん。
たすけてくれて、ありがとぉ…っ。」

『っ、うぅん。少しでも君達が痛い思いしなくて済んでよかった…！』

私の方へ駆け寄って、泣きながら手を伸ばす2人の手をぎゅっと握って我慢していた分私も子供達と一緒に泣いた。
だって私、ただの町娘なんだもの…初めて叩かれたし、痛かったし、皮膚が切り裂かれる痛さを知ったんだもの。