愛しのあの子はドーナツ屋。 (ページ38)

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気丈に振る舞う。ページ38

Aside
バシャリと冷たい水が顔に当たり意識が浮上する、水の滴る顔を上げると嫌な笑みを浮かべる男が数人。

「怪しい女がいるって報告を受けたときは焦ったが、ただの町娘だったらしいなぁ。」

「まぁ珍しい目玉を持つ上玉だ、高値で売れるだろうよ。」

『…こんな化け物売ったってはした金ですよ。』

「はは！この世には珍しいもん好きの狂人達がうじゃうじゃ居る！解剖にでもペットにでも好きに使うだろうよ。」

縛られた腕では濡れた前髪をかきあげられ目を晒されても隠せもしない、せめてもの抵抗に頭を振って手から逃れるだけだ。

『私が売られるより前に、貴方方が消されるだけですし私は構いませんよ。』

「誰もこんな所に助けになんか来ねぇよ！おい、こいつもあの檻にぶち込んどけ。」

親玉らしい男がそう声を上げ、私の脇に立っていた男は軽々とかつぎ上げると船内の一室にある檻に放り込んだ。

『いっ、売り物とか言う割に扱い雑だな、ほんと。』

「……お姉ちゃんも、捕まっちゃったの？」

『？…君は？』

「ぼくパル、あっちで睨んでるのが姉さんのピノ。」

『私はA。私もってことはパル君達、いえここにいる子はみんな捕まって？』

パ「うん、この国で捕まったのは僕とピノだけ。
あとの子は他の国から、次の島でオークションに出されるんだって。」

やっぱりこの船はそういう人攫いの物で間違いないらしい、キョロりと見渡して見ても10代の女の子とそれより下の男の子ばかり。
…めずらしい子と言うよりは、小さくか弱い子達ばかり狙ってるな。

ピ「パル！そんな気味の悪い女と話しちゃダメ…！
アイツらの仲間だったらどうするの！」

パ「仲間だったらこんな所に縛られて転がされてるのはおかしいよ。
それに僕はAさん綺麗だと思うよ。」

『！ふふ、ありがとう。パル君は優しいね。
でもお姉ちゃんも君が心配なんだよ、そばにいてあげて？』

軽く頷いてパル君はピノちゃんと私から離れた位置に座り直した。
さて、カタクリ君は助けに来てくれるかな。
カタクリ君が来るまでは、怖いけど私がこの子達を守らないと。