愛しのあの子はドーナツ屋。 (ページ35)

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覆う君。ページ35

メリエンダを始めてから気づいた事だが、私から向かいの壁には可愛らしい丸い窓がある。

しかしながら国のお偉い３人がこの店に消えた事を聞き付けた住民がチラホラと見える、住居スペース側まで見えてしまうのは困りものだなぁ。

『凄いね、イケメンパワー…カタクリ君の神経が疲弊する訳だ。』

ク「イケメンなのは認めるがそれだけが理由じゃないんじゃねぇーの？」

『あぁ、顔どころか性格までいい。
そのうえ寡黙でミステリアス、家族思い。
あとはある意味玉の輿だもんね。』

カ「そこまで褒めるのになぜ結婚してくれないんだ。」

『身分違いです。』

ペ「くくくく、王子という前に海賊だから気にする事も無いだろうに。」

そう言うもんでもないと思う、確かにカタクリ君は良い男だ。けど付き合いたいのかと言われると、よく分からないのが本音なんだからすぐに返事など出来ません。

それにしても視線が鬱陶しい、1人の時もこう覗かれては困るし後でカーテン買ってこよ。
ぐっとよった眉が、口を付けていたカップを優雅に置いたペロス君が前髪を触った事で目を閉じると同時に驚きで上がる。

ペ「小麦色の綺麗な髪だが、こうも目元を隠していては目が悪くなるぞ？」

ク「Aが目を隠してんのはいつもの事だぞペロスの兄貴。」

『…少し変わった目なので、この国では私の目の色を知ってるのはカタクリ君と女王様、あと眼鏡屋のお婆様だけですね。』

カ「見せる必要が無い。」

『ふふ、気味悪がられて泣かれちゃうしね。』

カ「そうじゃない。Aの瞳の色を知ってるのは俺だけでいいと言う意味だ。」

ペ「随分惚気けてくれるじゃないか、そんなに美しいのかい？」

『まさか、化け物ですよ。』
カ「あぁ、どの宝石よりも綺麗だ。」

スルと指から逃れて自嘲気味に笑って言った言葉は、カタクリ君に遮られた。
昔からそう言ってくれるのは変わりない、だけど小さな頃よりも言葉に重みを感じるのは何故だろうか。

視界の大部分を覆うほど主張してくる、この心情の色が重く感じるほど眩しいからだろうか。

驚いた様に目を丸くするペロス君と、砂糖を吐きそうな顔をしたクラッカー君に苦笑いが零れた。