愛しのあの子はドーナツ屋。 (ページ17)

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勘違い。ページ17

それならと思って私はいつだかと同じように、前髪をパイナップルのように結んでカタクリ君に笑いかけた。

『カタクリ君より化け物っぽい私がいるんだから、君の口なんて些細なものだよ。』

カ「！Aの目は綺麗だ、化け物なんかじゃねぇ。」

『はいはいありがとう、じゃあカタクリ君も化け物じゃないし醜くもないね。
はいアーンしてあげるから取りなー？』

カ「…ここでとったらアーンして欲しくて取るみたいだろ。」

「して欲しい癖に我慢すんなってー！」

父さんとカタクリ君の両隣に座ってさぁさぁと催促すると、諦めたように笑ってカタクリ君はストールを外した。
その時に前とは見なれない傷が見えて、そっと頬を撫でた。

『こんなところも怪我したの？口が裂けちゃったみたい。痛かったでしょ。』

カ「いや、これは…ドーナツを頬張りすぎてだな。」

「…まさかそんな事で頬って裂けるのか？っははは！どんだけドーナツ好きなんだお前は！全く困ったやつだ！」

カ「別にいいだろう！ここのドーナツ以外じゃ物足りなくて数食うしかなかったんだ！」

『それは職人冥利に尽きるけどね…。
あっはいアーン。』

お腹を抱えて爆笑する父さんを睨みながらも顔を赤くして照れるカタクリ君は、子供の頃と同じくらいの素直さで可愛らしい。
あ、でもアーンは別に恥ずかしがらないんだね。
やっぱり慣れてるのかな。イケメンになったもんなぁ。

『でもそんなにイケメンになったんだから
カタクリ君モテモテでしょ？』

カ「…まぁ、女に困ったことは無いが。」

『だったら別に、私じゃなくても』
カ「Aじゃなきゃダメだ。
俺を好きになる奴らは俺の素顔なんて知らない。」

『おぅ…熱烈だね、昔も今も。』

カ「俺の全てを受け入れてくれたのはお前だけだ
他なんて考えはねぇ。」

『うぅ、それは多分…好きとかじゃなくて、カタクリ君の秘密を知ってるから居心地がいいだけ。
カタクリ君は同じ変わった所のある私に執着して
思い出が美化されてるだけだよ。
私のことを好きだって勘違いしてる。』

手を握られあの時と同じように前のめりに言われても、私がずっと思ってたこの気持ちは伝えなければいけないと思ったんだ。

彼は受け入れてくれた器が欲しいだけで、私自身が好きというのとはちょっと違うと思うから。