陽だまりの様なイカ様 (ページ5)

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目覚めページ5

騒がしい声と、囁くような声に目を覚ませばガラスを挟んだ世界が広がっていた。
向こう側の人間たちは私をただの物のように競り落とそうとしているらしい。

(早くここから出なきゃ！)

(人間に買われてしまうよ、逃げよう！)

心配そうに私の周りを泳ぎ回る魚達。
目が回りそうなほどの情報量に目眩もするけど、それ以上にフツフツと私の中で湧き上がるものがある。

信じられない、どうして私がこんな目に。

水の中で息が出来ているのも、魚の声が聞こえるのも
…私が売られている事も全て

意味がわからない、こんなの許せない。

『っふざけないで！！どうして私ばかりこんな目にあわなきゃいけないの！！
全部、全部全部壊れてしまえ！！』

ゴボリと口から溢れ出た気泡が弾けるのと同じく、私は激情のままガラスを叩き割った。

割れた水槽から身を乗り出してステージに立つと、袖から黒服の男たちが出てきた。
司会の男もこちらに歩みよってくる。

「おい暴れるなよ、お前の首に繋がる首輪は外そうとしたり暴れたら爆発するんだからな」

「大人しくそこで買い手を待っていろ」

『うるさい、邪魔なのよ』

嘲笑する男達を腰から生えた触手で薙ぎ払う。
力の使い方は、何故かわかっていた。

どんどん膨れる怒りの感情に合わせるように高くなる視界からは、私の変貌に悲鳴をあげて逃げていく人間達が見える。

『何逃げてるのよ、私が欲しくて競ってたんじゃなかったの？逃がしてやるなんて言ってない！！』

「ぎゃああああ！！やめ、やめろぉ！！
はなせ、ぐぇっ…！」

「きゃあああ！！化け物、化け物よォ！！」

『化け物にしたのは貴女達でしょう、自業自得よ』

6本の触手で絡めとった人間達を捻り潰している内に、首元からけたたましい音が聞こえ出す。

「これ以上めちゃくちゃにされてたまるか！しねぇ！！」

黒服が押したらしい起爆スイッチを高らかに掲げて笑っていた。