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カタクリside
海上の警備を終えママに報告をした帰りに子供部屋の近くを通ると、普段は昼寝中で静かな筈の部屋からは賑やかな声が聞こえる。
カ「…ペロス兄?入らないのか?」
ペ「まぁな。お前もこっちに来い面白いものが見れるぞ」
カ「面白いもの?」
開いた扉に寄りかかるペロス兄に首を傾げつつ言われた通り中の様子を覗くと、先日連れ帰った女が下の弟妹達に絵本を読み聞かせているらしい。
だがその読み聞かせは何時も自分達がしている様なものとは全く別物だ。
カ「……読み聞かせと言うよりも演劇でもしてるのか?」
ペ「それもなかなかの迫真の演技でな、すっかり弟妹達はAの劇に夢中なんだ。ペロリン♪」
カ「なるほど、それで昼寝どころではないと」
確かに聞こえてくる演技は中々のものだが、それよりも目を引くのは女の表情だ。
劇に魅入られた弟妹達に向ける眼差しは慈愛に満ちた柔らかなもので、少し驚く。
あいつが俺達に見せる表情はいつだって真顔か嫌そうな顔ばかりだからな。
ロ「あっ!ペロス兄様にカタクリ兄様!」
ガ「え、本当だ!おかえりなさいっ」
ペ「ただいま、今日はAに絵本を呼んでもらっていたのかい?」
シ「そうよ!とっても面白いの!」
ローラの声にこちらに駆け寄ってきた双子達の頭を撫でながら微笑むペロス兄から女へ目線を移せば、先程までの表情は消えてこちらを見ていた。
『いつからそこへ?』
カ「今来た所だが、なにか不都合でもあるのか?」
『いえ、下手な読み聞かせを聞かれていないのならいいんです』
プ「下手なんかじゃないわよ、とっても楽しい劇だったわAちゃん!」
『でもお昼寝って感じじゃなくなっちゃったしねぇ…』
ペ「確かにな、ならこれから昼寝をすればいい。
なに召使一人いなくても城は正常に回るとも」
『は?…あっいやいや、そんな仕事をサボる訳には!』
ペロス兄の言葉に目を丸くしてそちらに顔を向けるとニヤリと笑って、弟妹達をけしかけて女と昼寝の準備をさせ始めた。
ペ「子供好きならあの子達にAの警戒心を解いてもらえばこちらもやりやすいだろう?」
カ「…そこまで入れ込む必要があるのか?」
ペ「戦力は多ければ多い方がいい、ママにも物怖じしない人間なんて野放しにできないだろ、ペロリン♪」
愉快そうにキャンディケインを回すペロス兄の言葉に、今後の危険性を考えればと自分の考えを改めた。
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作者名:雪見もち | 作成日時:2022年9月30日 12時