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九話 思想が乱れる、事実は何処へ? ページ10

俺は目を瞑った

願に降り注ぐ輝く雨は鋭く
彼女を美しく俺の目に焼き付けた

願を助けなくてはと思うより

綺麗だ

そんなことを思った
笑っている願の顔をガラスに反射した光がさらに輝かせた

この世のなによりも綺麗だった

そして俺は願を見捨てた
情けなかった

足が動かない
気持ちでは助けようと思っていても体は逃げた

だから目を瞑った


...ガタン、ガタン


止まっていた時が動いたように周りの音が聞こえてきた
いまの出来事がなくなったように無情に電車は動き続けていた

幻だったらいいのに

願が"びっくりした?"って笑顔で聞いてくればいいのに

目を開けたらわかっている事実を受け止めてしまう気がして
目を開けられなかった

『じゃあね!七』

願の声が聞こえた気がした

「願!?」

目を開けた先には
なにもなかった

割れたはずのガラスも
おろしたはずのレバーも元に戻ってる

そしてそこに居たはずの願は



居なかった



願が持っていた鞄も、さっき一緒に使った弓も

最初から願なんていなかったように
最初から俺一人だったように

最初から俺は孤独だったようになっていた


俺は操縦室から飛び出した
願がいた証拠が欲しい

外に置いてある俺の鞄を開きスマートフォンを取り出した

連絡履歴に一番上に表示されているはず
今までもずっと動くことのなかった一番上
願の特等席

そこにあるはずだとわかっていても指が震える

履歴を確認すると一番上は

母親だった


嫌な汗が流れる

少しの希望を求め連絡先の"な"の行を何度も見る
何度見ても願の名前はなかった


わかっていた
心のどこかでわかっていたはずなのにどこかで期待していた

事実を見たくなかった、知りたくなかった
願が居ない世界なんか考えられない

俺は立った

まだ諦められない
だってさっきまで確かにここに居たんだから

俺は願がここに居た証拠を探した
俺の幻想なんかじゃない...そう確信が持てるモノを

それを暴いたら願の死を意味することもわかっている

証拠があればいいのに
証拠がなければいいのに

矛盾した思いがぐるぐる回り俺の思考もかき乱していく


誰もいない冷たい電車の中俺の声が響く

「もうわっかんねぇよっ...!」

十話 存在証明、切れぬ非通知→←八話 ガラスの輝き、私のオモイ



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設定タグ:TRPG , クトゥルフ , きさらぎ駅   
作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
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(プロフ) - 架空夢想像さん» 早く気よ向けっ! (2015年7月12日 11時) (レス) id: 7ae0e795be (このIDを非表示/違反報告)
架空夢想像(プロフ) - 燐さん» 気が向いたら更新しまーすw (2015年7月12日 6時) (レス) id: d18e4db244 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 良い所なのにっ(泣) (2015年7月12日 1時) (レス) id: 7ae0e795be (このIDを非表示/違反報告)
架空夢想像(プロフ) - 嶺華さん» 気にするなっ!www (2015年5月1日 0時) (レス) id: d18e4db244 (このIDを非表示/違反報告)
嶺華 - 赤いミートソース気になるw (2015年4月30日 23時) (レス) id: 7ae0e795be (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:架空夢想像 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kakuumusou1/  
作成日時:2015年4月25日 23時

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