私と小さい官僚と ページ9
姐さんから中也を任せられて早十五分
彼は私の傍から離れる様な兆しがない
因みに私の分の仕事は姐さんが遣ってくれるらしい
其れに関しては有り難いと思った
それにしても、あの時の中也の『手前なんか知らねェ』発言は何処に行ったのやら
そう思っていると、中也が突然呟いた
「之食いてェ…」
机とほぼ一緒くらいの高さの中也が目をキラキラさせて見いたのは、机の上に並べられた私の好物だった
「棒付き飴が食べたいの?」
「おう」
「ふーん」
私は中也を抱き上げ、様々な種類の味の飴から一つ選ばせた
普段、好物は人にあげない主義だが、中也なら、と其の時そう思ってしまい行動した
包装紙を剥いて中也に差し出す
「ん…!A、之美味ェ!」
「そりゃあ善かったね」
ニカッと笑う其の表情は、幼少期の頃から変わっていないみたいだ
もごもごと飴を必死に口内で舐める中也に、ふっと微笑んでしまった
.
飴を食べた後は、鬼ごっこやかくれんぼ等々、兎に角動き回った
「A…」
「何?」
「だっこ…」
私より幾分か小さい官僚が控えめに強請る
自然となる上目遣いがひどく可愛い
疲れ切ったのか、若干瞼が下がっている気もする
「…少しだけだよ」
何時の間にやら手を此方に向けている
其の躰を持ち上げ、しっかり私に掴まらせる
「ん」
すぐさま首元に顔を埋めた中也
成長した彼の筋肉質な躰とは一変、子どもの柔らかく温かい躰
心地好い────
「A、…すき」
「…そりゃあどうも」
「Aは俺のことすきか?」
少し、沈黙が流れる
「そうだね……うん、好きだよ」
子どもにそんな事を訊かれるとは思いもよらなかったから
「へへっ。じゃあ俺たち“りょーおもい”だな」
随分と嬉しそうに笑う
きっと彼は其の“りょーおもい”という意味を解っていないのだろう
私は決してそういう意味で好きと発言したのではない
冗談まじりの発言だ
…けど、本当は────────
────────否、止めておこう
「中也、少し寝よう」
「Aも寝るのか?」
「私は君が眠ってからにするよ」
中也を抱きかかえた侭、ソファに腰掛ける
あやす様にぽん、ぽんとリズム良く軽く叩くと彼は直ぐに寝てしまった
私も温もりと気の緩みから、眠りについた────
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作者名:ルナ | 作成日時:2018年3月22日 0時