【文スト】王様に花束を【中原中也】 (ページ2)

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王様と俺と御褒美とページ2

大量の棒付き飴の入った袋を片手に、全力疾走で廊下をかける

角を曲がり、直進
そこには最近よく見るようになった扉が俺を待ち構えていた

｢あ。おかえり、中也。早かったね｣

｢ｯ…、人使いが荒いンだよ手前は｣

扉だけが俺を待っていたのではない
眼前にいる一見清楚な雰囲気のあるこの女も、俺の帰りを待っていたのだ

｢ちゃんと買ってきてくれたんだね。えらいえらい｣

｢手前の異能のせいで嫌でもやらされてンだよ！｣

王様は俺の言葉を歯牙にもかけず、俺から白い袋を奪い取り、その中身をじっくり見た

そう、俺は最近この我儘な王様に振り回されている
見た目は良いのに中身が残念なのが玉に瑕(きず)なこの王様に…

｢今日はこれにしよーっと｣

取り出してきたのは俺が買ってきた棒付き飴ではなく、机の上にある此奴の手持ち品(ストック)の方

俺が走った意味は一体…
至極そう思いながら頭を抱え態と大きく溜め息をついた

チラリと目の端にいる王様を捉える

…平然と飴を舐める姿しか映らねェ…だと？

目を疑った
少しは目の色を変えて俺を気遣ってくれてもいいだろ
俺はむすっと表情を露にする

否、待て
俺は此奴に何を期待してる
此奴は“絶対王政”の王様だぞ
此奴の官僚(パシリ)として選ばれてしまった時点で、俺に慈悲なんてモノは無いンだぞ

心憂いへと陥った俺は自然とこの部屋から退こうとしていた

その時だった────

｢待って中也…！｣

｢うおっ、！？｣

外套を思いっきり引っ張られ、バランスを崩しそうになる
此奴…、次は何を命令する気だ
之以上は懲り懲りだ、そう訴えるように俺はキッと王様を見下す

｢之、あげる｣

王様の手中にあったのはワインボトルだった
ぱっと目を見開き王様を見る

｢私からの感謝の気持ち…
その、……ありがとう｣

顔を赤めて、けど此方から目線を外す王様
────控えめに云って可愛い

｢ありがとな、王様｣

感極まった俺は王様の頭を撫でまわす

｢わっ、ちょっと中也…！
ワイン没収するよ！｣

｢なッ、其れは勘弁してくれ！｣

この通り、と俺は両手を身体の前で合わせる
すると王様はにやりと口角をあげ、こう云った

“じゃあまた明日から頑張ってね”

(手前ｯ、本当は之が目的で)
(今更？本当に中也って扱いやすいよね～)
(待てコラッ！！！酒だけは！！)
(本当に扱いやす～い！)