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「んで、……まだっ『鬼の時間』じゃないのに!」


息を切らしながら、俺は走る。
鬼の時間に出歩いて姿を見られた時は、村に一つしかないあの神社の鳥居をくぐれと聞いたことがある。
それが正しい逃げ方なのかは分からないけど、今は鳥居をくぐるしか方法がないような気がした。


──して。……だ、……してよ。……して。


声は一定の距離をあけて着いてくる。
近付くことも、遠ざかることもない声が一層不気味だった。


「してって、なにを……だよっ!俺は何もしてねぇ!」


声に向かって叫ぶ。
鳥居はまだ見えない。ずっと走っているはずなのに、もう鳥居の近くにいなければいけないはずなのに。
空の色だってそうだ。もう暗くなっていいはずなのに、放送は延々と続き、夕焼けと星空が半々になったまま固まっている。


「いやだ。……いやだ、さらわれたくないっ!」



そう叫んだ瞬間、足がもつれて俺は砂利の上に転がり込んだ。ざりざりと小さな粒が膝を擦りむき、傷口が熱く感じる。


「いってぇっ……」


くそっ……と呟く暇もなく、俺は立ち上がる。
背後に聞こえる声は、耳に息がかかってしまうんじゃないかと思うくらい近くまで迫っていた。


足の痛みを堪えながら立ち上がると、目の前にはさっきまでなかったはずの鳥居が構えている。
ゲームだったら、何かの罠かもとスルーする場所だろうけど、声に捕まりたくない一心でその中へ駆け込んだ。




──どうして。……返してよ、返して。


鳥居の向こうで悲しそうに泣く声に振り向くと、額の左側に一本の角を生やした俺が立っていた。

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さっくさく。(プロフ) - るーりさん» コメントありがとうございます。自分の脳でキャラが動くままに書いているので、面白いと言っていただけて嬉しいです。拙作を閲覧していただいてありがとうございます。 (2020年8月18日 20時) (レス) id: 268527d70a (このIDを非表示/違反報告)
るーり - 小説のオリジナル作品見たことがなかったんです!でも、すごく面白いなと思いました!私、想像するのが苦手で作れないんですけれど、色んなのがあるんだなと改めて思いました!面白かったです! (2020年8月18日 20時) (レス) id: 7ac2a7ec47 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さっくさく。 | 作成日時:2020年2月26日 12時

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