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みんなの笑い声が鳥居をくぐり、段々と遠くなっていく。すっかり声が聞こえなくなり、俺はみんなに向かって振っていた手をだらんと下ろし、ため息を吐いた。
無人の境内を見回す。
まだ人がいるかのように揺れるブランコや、みんなで食べたおやつのカスが散らばる小さなベンチ。
耳の奥にはまだ、みんなの笑い声とゲームの電子音が響いているのに。
「みんな、真面目だなぁ……」
どうせ鬼なんていないのに。
そう呟いて、本殿に上がるための階段へと向かう。
二年前から両親は共働きで、遅くなるまで帰ってこないことが多くなった。
暗くなったら鬼が出るから、そう言って母さんは鍵を渡してくれたけど……、誰もいない家に帰るのが嫌で、俺はずっとこんなことをしている。
階段に腰掛け、おやつのチョコをポリポリかじりながら空を見上げる。赤と黒が半々の空は不気味な雰囲気が漂っていた。
──にの時間になりますので、子供は避難してください。空が暗くなりました。鬼の時間になりますので、子供は……。
プツン、と途切れた放送に「鬼の時間」になったのだと悟る。
どうせ今日も鬼なんて出てこない。放送を聞いても帰らないような悪ガキがここにいるのに、この二年間鬼を見た事は一度もなかった。
みんな、鬼がいるって信じこんじゃって……馬鹿みたい。
あんなもの、大人たちが作った空想の生物じゃん。絵本に出てくるような恐ろしいものなんて、本当はいないのに。
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さっくさく。(プロフ) - るーりさん» コメントありがとうございます。自分の脳でキャラが動くままに書いているので、面白いと言っていただけて嬉しいです。拙作を閲覧していただいてありがとうございます。 (2020年8月18日 20時) (レス) id: 268527d70a (このIDを非表示/違反報告)
るーり - 小説のオリジナル作品見たことがなかったんです!でも、すごく面白いなと思いました!私、想像するのが苦手で作れないんですけれど、色んなのがあるんだなと改めて思いました!面白かったです! (2020年8月18日 20時) (レス) id: 7ac2a7ec47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さっくさく。 | 作成日時:2020年2月26日 12時