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くだらない話をしたり、他の子とゲームをして遊んだりしているうちに空が赤くなってきた。夕焼け空を黒いカラスが飛んでいって、畑仕事の終わりを告げる鐘がなる。


と、同時に金属音に似た不快な音が響いた。





──空が暗くなりました。鬼の時間になりますので、子供は避難してください。





少女の声は、静かに言う。
機械のようにただ淡々と繰り返す声に、誰かが「帰ろっか」と呟く。蒼馬以外のみんながそれに同意し、支度を始める。


赤い空を見上げると、木々に覆われた山の向こうから黒い影が赤い色に手を引かれてやってくる。


「……なぁ、鬼って本当にいるのか?」


ぼんやり眺めていると、蒼馬が突然そんなことを聞いた。
その言葉に俺以外の子も動きを止める。
他所から来たとはいえ、この村のことには多少慣れてきていたと思っていただけに、みんながきょとんとした顔で蒼馬を見つめる。


しん……と静まり返った境内を生暖かい風が吹きぬけた。その静けさを打ち破ったのは、ぷっ……と吹き出す声だった。
笑ったのは、鳥居に一番近い場所に立つ大平(おおひら)龍樹(たつき)だ。くっ、くくく……と身体を小さく折りたたみ、肩を震わせ笑う。


「何が面白いんだよ!」


蒼馬が噛み付く。
龍樹は短く息を吐き出し、真面目な顔つきで言った。


「何当たり前のこと聞いてるんだよ。いるよ、鬼はいる。悪い子供は、みんな鬼にさらわれるんだ」









──空が暗くなりました。鬼の時間になりますので……。




「早く帰るぞ。鬼に見つかる前に」


龍樹の言葉に、蒼馬はもう何も言わなかった。
ただ黙って、道を急ぐ子供たちの後ろを、着いて歩く。









「また遊ぼうね」

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さっくさく。(プロフ) - るーりさん» コメントありがとうございます。自分の脳でキャラが動くままに書いているので、面白いと言っていただけて嬉しいです。拙作を閲覧していただいてありがとうございます。 (2020年8月18日 20時) (レス) id: 268527d70a (このIDを非表示/違反報告)
るーり - 小説のオリジナル作品見たことがなかったんです!でも、すごく面白いなと思いました!私、想像するのが苦手で作れないんですけれど、色んなのがあるんだなと改めて思いました!面白かったです! (2020年8月18日 20時) (レス) id: 7ac2a7ec47 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さっくさく。 | 作成日時:2020年2月26日 12時

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