34. 叶わぬ夢 ＜ヒロインside＞ ページ34
....頬をなで過ぎて行く
潮風は冷たいのに。
智くんと触れあってる部分は
すごくあったかくて。優しくて。
思わず泣きそうになる。
抱きしめたまま
何も言わない智くん。
時間が過ぎていくにつれ。
少しずつ腕の力も増していって。
....私も。智くんの背中に
まわした腕に力こめていた。
聞きたかった言葉。
でも遮った。
聞いてしまったら。
もう本当に後戻りできる
自信なかったから。
でも抱きしめられてしまって。
最初は逃れようとしたけど。
智くんの甘い香りと。
優しくて力強い腕には
かなわなくて。
...ううん、何よりも。
私が欲していたんだ。
その腕を。ぬくもりを。
...智くんを。
一緒にいればいるほど。
やっぱり好きになっていってた。
ご飯粒ほっぺたにくっつけて。
私の作ったおにぎり、
おいしいって何度も
つぶやいて食べてくれる姿。
真剣に釣竿を握って
海を見つめる姿。
また違った色で海を見つめながら
鉛筆を走らせる姿。
照れた時の、困ったような笑顔。
そして今、私をまっすぐに
見つめてくれるその瞳。
....もうだめだった。
目を閉じて。もう一度
智くんの胸に顔をうずめる。
聞こえるのは。
終わりのないさざ波の音と。
少し速いリズムを刻んでいる
智くんの心臓の音だけ。
ずっとこうしていたい。いたいよ。
でも。それは叶わぬ夢なの....
どのくらいそうしていただろう。
いつしか雨はやんでいて。
代わりに。
少し暮れはじめた太陽がまた
私たちを優しく照らしていた。
ゆっくりと。
水平線へと傾き始めた陽。
まるでこの世の終わりみたいな
美しさに息を飲む。
こんなきれいな景色、
見たことないよ....
智くんの腕の中から。
ずっとその光景を見つめていた。
智くんもやっぱり
何も口にしないまま。
ただ一緒に暮れていく
夕陽を見つめていたんだ。
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かこ(プロフ) - 杏さん» いつもありがとうございます♪初めて挑戦した智くん作品、気に入っていただけたらいいな...(＾＾）最後までどうぞよろしくです。 (2014年1月14日 14時) (
レス) id: b9db3344e7 (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - 新作っ!今回の作品もめっちゃ期待してます＾＾更新、頑張ってくださいね!!! (2014年1月10日 22時) (レス) id: f1b8103735 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かこ
| 作成日時：2014年1月10日 21時
