過去と今と未来と (ページ20)

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赤に染まる海を見た青の雪ページ20

何年も前の青

旅行に行こうと言ったのは誰だったか
よく遊んでいた友人が引っ越してしまってから数ヶ月経ち友人の家でチケットが当たったとかで渡辺の家族は誘われた

会う前に渡辺は両親から衝撃的な事を聞かされた

「翔太、あの子ね、学校でいじめられているらしいの
だからその事を忘れられるように元気にしてあげて」
「、大丈夫なの？」
「...何回か未遂も起こしてるらしいんだけど、あの子の親御さんたちも元気にさせてあげたいらしくて」

そんな重要な事を渡辺は任された
直接的な言葉で伝えられたわけではないけど、相当精神にきているのだと感じた渡辺は絶対に元気にさせよう、と決めて旅行当日を迎えた

待ち合わせ場所で久しぶりに会った友人は少し元気がなさそうに見えるものの、明るく振る舞っていた

泊まった旅館は海が見える場所で各部屋には小さな庭がついており、紅葉がちょうど綺麗な時期で庭には絨毯のように紅葉が敷かれていた

海が見える温泉に入り、美味しい料理を食べ終え部屋でまったりとしていた時だった
向かい側の友人家族が泊まっている部屋がなにやら騒がしい

内容は聞こえないが焦っているようで、渡辺の父が見に行くことになった
自分達だけでなく、親同士の中も良かった
数分も経たなうちに父は帰ってきて
「すぐにここから出た方がいい」と言った

「なんで、あの子は？」
「お前は知らなくていい」

どうしても心配で渡辺が父に聞いても教えてはくれなかった
母に耳打ちをし、驚いた顔をした母は急いで荷物をまとめ終えすぐに部屋を出た
だが廊下へ出ると煙が充満しており訳がわからないまま渡辺は父に手を引かれてどうにか外に出ることができた

そこで渡辺は振り返り見た光景に目を見開いた

激しく燃え上がる炎に、上へ上へと立ち昇る黒煙に、
渡辺は恐怖を感じた

自分達がさっきまでいた旅館が燃えていたのである