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阿部が目を覚ました時はあの日から一ヶ月が経過していた
事故を起こした友人の親戚の車に乗っていた他の人は軽傷で済んだらしい
あの事故はレンタカーの故障が原因だったらしい
唯一、阿部だけが目立った外傷はないものの一ヶ月もの間眠り続けていた
起きた時には何も異常がないと思われていたが、友人の家族が阿部に謝りに来た時、分かったことがあった
「阿部さん、本当に申し訳ございません」
「本当にごめん」
「誰、ですか?」
付き添っていた阿部の両親は顔を見合わせ
もしかして、と先生に聞いてみると一部記憶障害があると言われた
とはいえその記憶障害は生活に支障をきたすほどのものではなかった為、阿部自身はあまり気にしていなかった
退院し家に帰っても変化はなく家族も安心していた
だが自宅療養期間が終わり学校に復帰すると阿部は変わってしまった
復帰後1週間ほどでテストがあったのだが
テストの結果はいつもより少し下がったくらいで大した変化はなかった
それどころか一ヶ月も眠っていたのにも関わらずこの結果は凄い、と阿部は先生や友人から褒め称えられた
そこから阿部は学校では普通に振る舞っていたが家に帰ると何も喋らなくなった
いつもはなんとも思わないはずの言葉が、上手くモチベーションに変えていたはずの期待や信頼が
阿部にはプレッシャーとなってしまったのだ
次第に、家ではロボットのように感情をなくし、学校では周りが求めている姿へと自分を作り変えていった
この時には既に本来の阿部の姿は見えなくなっていた
もう手遅れかもしれない、その可能性はあったが最後の頼みとして両親は阿部に精神科を受診させた
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作者名:coolk | 作成日時:2020年3月13日 19時