陽炎（かげろう） (ページ7)

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それから五人が思い思いに座って雑談しているところを撮影して、
三、二で別れて撮影したら今日は終わり。

俺と智が最後だった。
気に入ったのか、さっきのクッションを抱えて寝転がる智の傍に
赤いマグカップを手に座る。
俺を見上げる柔らかな笑顔、投げ出されていた手を取るときゅっと握り返してくる。
智の鳶色の瞳に俺が映ってるのが見える。

ねえ、少しは俺への気持ち変わった？
そんな顔して見つめられたら切なくて抱きしめたくなるよ。
「終了です。お疲れ様でした」
起き上がろうとする智の腕を掴んで引っ張り上げてやる。
「ありがと」
ふわんと笑ってスタッフに挨拶する智と二人並んでスタジオを後にする。
ニノみたいに手は繋がないけどね。

「この後、予定ある？」
楽屋への廊下を並んで歩きながら智に声をかける。
「ん～、今日は予定ないけど…まっすぐ帰ろうかなって思ってた」
「俺とじゃ気が進まない？」
「…どうしたの？」
ちらりと俺に視線を向け柔らかく笑う。
「いや、…ごめん」
気まずくなってそのまま黙る俺にふわりと身体を寄せてくる智。
「お前の奢りなら行く」

優しいあんたはそうやって俺を甘やかす。
今のは俺のわがままだよ。断っていいんだ。
「…まっすぐ帰れよ。帰りたいんだろ」
口を突いて出たのは心にもない台詞…智はそれを聞き流す。
俺の気持ちなんてお見通しって感じだ。

楽屋へ帰るとニノの姿はもうなくて、相葉くんと翔さんがいた。
「お疲れぇ」
バッグを下げた相葉くんが俺らと入れ替わりに出ていく。
「お疲れ、相葉ちゃん。また明日ね」
智が手を振る。
「智くん、明日は相葉くんと一緒にＣＭ撮影とポスター撮りだね」
「うん。何時からだったっけ」
「一時からだから、十二時にはマネが智くんちに迎えに行くんじゃないかな」
「そっか、ありがとね。翔くん」
智のスケジュールをよどみなく答えた翔さんが身支度を済ませて立ち上がる。
「じゃ、お疲れ。って言っても俺は今からもうひと仕事だけどね」
「ああ、イケメンキャスター櫻井だね。今日も頑張って」
「うん、頑張ってくる」
そう言って智を抱きしめて背中をぽんぽん叩いた翔さんは颯爽と楽屋を出て行った。

なんだかんだで智に対してスキンシップが多い翔さんは、そういうことをさらりとやってのける。
俺はライブとかじゃなきゃ、そういう絡み方はなかなかできないから、なんだかおもしろくない。