陽炎（かげろう） (ページ6)

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「もーあなたたち、何やってんの」
そんなこと言いながらもデレデレな翔さんから思わず智を奪い取る。
「ほらリーダー、早くしないと撮影一番でしょ」
「うん」

素直に翔さんから離れてざっくりした白いニットに袖を通す。
智の華奢な身体には少し大きいそのニットの広く開いた襟ぐりから鎖骨が覗く。
…それに釘付けになる視線をなんとか引きはがし、自分の衣装に手を伸ばした。

良く見ると他のメンバーの衣装もラフなデザインのゆったり目のものだった。

ニノは可愛い系のクシュクシュした薄手のハイネックセーターにお約束の萌え袖、
相葉さんは毛足の長めなフリースのプルオーバー、翔さんはネルシャツにニットのパーカーで
俺は智と同じニットのデザイン違いでＶネックだった。

スタジオはさっきと一変してふかふかなファーの敷物が敷き詰めてあった。
五人とも白い衣装で一面真っ白だった。そこにカラフルな小物が点在している。

「では、大野さん。お願いします」

カメラマンの指示でコロンと寝転びポーズを決めていく。
智はチョコレート色のクッションを抱えて、ころころ転がりながらいろんな表情を見せる。
子どもっぽくあどけない表情から悪戯っぽい笑顔。
そうかと思えば上目使いに見上げる瞳は挑発してるようにも見える。
カメラマンは夢中でシャッターを切ってる。
具体的な注文は一切ないのにカメラマンの望む表情を感じ取ってるんだ。
勘のいい智ならではの撮影風景だ。

ニノもそう。望まれてるものを的確に表現する。今回は可愛い系のセーターだからっ
て子犬みたいな顔して笑ったり、おねだりするみたいにうるうるの瞳でじっと見つめたり…
とにかくアイドルってのを前面に出す。
　
相葉さんはきらっきらの笑顔で黄色いバランスボールとじゃれて、
翔さんはとろけるような優しい笑顔で頬杖をついて、それぞれの撮影を終える。

俺はひとりがけのモスグリーンのソファで足を組み「こっち来いよ」ってカメラを見る。
俺に求められるのはいつもそんな感じだった。
でも今回は柔らかい感じのセット合わせて、ちょっと甘い笑顔を作ってみる。

カメラマンの後ろからこっちを見てる、あんたを呼ぶように…