陽炎（かげろう） (ページ38)

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最終話ページ38

「みんな、ありがとね」

一瞬止まった時間…
ニノがたまらず茶化す。

「あーもう何、この空気。大野さんが変な事言うからでしょうが」
「なんだよ、せっかく真面目に言ったのに…」

唇を尖らせ、翔さんに助けを求める視線を送る智。
それを受けた翔さんが笑って話題を変える。

「まあまあ、それより俺、さっき松潤が作ってた炒飯食いたい」
痛みどめを飲んでるから、智はビールも飲めないし、明日はみんな仕事だから
酒はこの辺でってことだった。

「締めは炒飯か。いいね」
「え、松潤作ったの？中華は俺じゃんっ」
「だったら、味見してよ。なかなかの出来だよ。何たってここにあるもんだけで
作ったんだからね」
相葉さんが不満げに言うから、つい言い返してしまったら、智が頷いて絶賛した。

「そうなの、なんも無いのに美味しいの作ってくれたんだ。マツジュンすごいよ」

屈託なく笑う智に頬が緩む。
ニヤニヤ笑うニノの視線を感じて、あわてて顔を引き締めて立ち上がった。
「じゃあ、持ってくるね」

「おいら、手伝う」
そんな嬉しいこと言って智がついて来るから、もうニノには顔なんて見せらんないよ。

ああ、もう降参だ。俺はこうして智が隣で笑っててくれれば、こんなに嬉しいんだから
しょうがない。

お互いに気にすることでぎこちなくなるんなら、俺が言ったこと、気にしなくてもいいよ。

楽しそうに笑う智を見て、吹っ切れた。
なにが大切かって知ってたはずなのに、いつのまにか見失ってたんだ。

あの時、ニノの言葉で目が覚めたのかもしれない。

だからって諦めた訳じゃない。それとこれとは話は別だ。
返事をくれるのを今か今かって待たないってだけ。

時間がかかっても、少しずつでも…智の中の俺っていう存在を大きくしていくから。
そのうち無視できないぐらいに大きな存在になってみせるよ。

そう…

あんたの心はまるで追いかけても捕まえられない陽炎みたいで…届きそうで届かない。
でも、俺は諦めないよ。

いつか…そう遠くない未来に、必ず手に入れるから。

覚悟しとけよ。

ｆｉｎ