陽炎（かげろう） (ページ37)

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「あー、この状況はちょっと問題ありだな」
翔さんが困った顔でそう言った。
「え、何が？」
俺が訊くと智が柔らかく笑って答えをくれた。

「だって、一人足りないよ。相葉ちゃん、まだ仕事かな」
「ちょっ待って、今、確認するよ」
翔さんはメンバーのスケジュールをだいたい把握してる。

「もう、家に帰ってるころだな。飲みに行ったりしてなければ、だけど」

結局、相葉さんが来るのを待って、小宴会が始まった。
智の周りはいつもこうやって誰彼となく集まる。
俺はとんでもない人を好きになったんだなって今更ながらに実感する。
だって、みんな智が好きで集まって来るんだからね。

翔さんにしてもニノにしてもそれぞれ形は違うけど、智に特別な想いがあるのが分かる。
相葉さんだってそう。

智はそんな俺らに分け隔てのない優しさをくれる。メンバーに対する特別な気持ちで
接してくれる。それはわかってる。
これ以上の特別を求めるのは俺のわがままなのかもしれない。
そんな事を考えてたら、鳶色の瞳が俺を見詰めてた。

「どうしたの？」
「いいや、楽しいなって思ってね」
「そうだね、おいら幸せもんだよね、こんなにみんなに心配してもらってさ」
「でも、今回みたいなのはもう勘弁してよ。寿命が縮むから」
翔さんが情けない顔で言う。

「うん、今回のことはほんとに反省してる。みんな、ごめんな」
改めて智は皆に頭を下げた。翔さんがそれを見てあわてて訂正する。

「いや、そうじゃなくってね？智くんを責めてるんじゃなくて、その…」
「無茶してんじゃねえよってことじゃないの？」

ニノが意地悪く変換するから、目を白黒させて翔さんがますます慌てる。

「いやいや、違うでしょ」
「翔ちゃん、焦り過ぎ」
相葉さんがゲラゲラ笑うのにつられて智も笑った。

「うん、わかってるよ。でも、みんなにちゃんと謝りたかったの」
少し照れたように目を伏せて、それから顔を上げてもう一度笑った。