陽炎（かげろう） (ページ36)

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「たとえば、俺が怪我したらあんた代わりにやってくれるだろ？みんなそうだろ、一緒だよ」
「そっか」

それきり何も言わず、さえれるがままの智の柔らかな髪をドライヤーで乾かしてやる。
「一丁上がりっと」
ふわふわの髪の智はなんか雛みたいだった。
「ありがと」
乾いた髪をかき上げて、ふわりと笑うその顔が妙に可愛くて思わずニヤケそうになる。

ばれないように視線を逸らすとテーブルの上にあった智のスマホが光ってるのに気付いた。
「あ、智、電話だ」
立ち上がろうとする智に渡してやる。
「はい。…あ、うん。…うん、いいよ」
短いやり取りをして電話を切った智が俺を振り返る。

「今から翔くんがくるって。でね、ニノも心配してるから途中で拾って一緒にくるみたい」
「そう。じゃあ、何か作ろうか、これだけじゃ足りないよね。ちょっとキッチン借りるよ」
「でも、冷蔵庫ん中あんまり入ってない…かも…」

だろうね。ミネラルウォーターとビール、あとは酒のあてみたいなのしかない。
「あんた…最近、外食しかしてないんだね」

肩をすくめて、使えそうなものを物色する。さいわいレトルトパウチの白飯なんかが
あったから、缶詰使って炒飯を作る。

「凄いね、マツジュンって…あり合せて料理作れる人って尊敬する。」
隣で俺の手元を眺める智はそんなことを言いながらフライパンから直接つまみ食いする。
「あっちいっ、けど、うめえ」
「火傷すんなよ」

ちょうどでき上がった頃に翔さんとニノがやってきた。

「お、いい匂い」
二人同時に口を開いて、顔を見合わせ笑った。
「松潤も来てたのか」
智の後ろから顔を出した俺を見て驚く翔さんの肩越しに、やっぱりなって顔で
ニノが肩をすくめた。