陽炎（かげろう） (ページ34)

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夕方からの雑誌の撮影に向かう途中、智からのメールが来た。

『チーフにたっぷり怒られた。でも大丈夫』
短いメールだけど、なんか嬉しくて自然に笑みが浮かぶ。

「松本くん、なんかいい事あった？すごくいい顔してるよ」

撮影中、カメラマンに言われて気付いた。
俺の心の内側にこんなにも大きな影響を与えられるのは智ぐらいだろうって…
あんな短いメールひとつでこれだからな。

突然、どうしようもなく智に会いたくなった自分に可笑しくなる。
今朝まで一緒にいたっていうのに何だよってさ。

仕事終わったら、会いに行こう。そう決めて仕事に集中する。

順調に撮影をこなしながら最後の撮影の待ち時間に、
もしかしたら疲れて寝てるかもしれないから電話はしないでメールする。

『体調はどう？大丈夫なら仕事終わったら、ちょっと会いに行ってもいい？』

撮影が終わって控室に帰った時には智からの返事が来てた。
『いいよ。大丈夫』

急いで帰り支度をして車を出した。
智はたぶん何も食べてないだろうから、途中で夕食を調達する。
智のマンションについたのは二十一時だった。インターホンから聞こえる声は
いつもの智だった。

「いらっしゃい、上がって」
シャワーを浴びたところのようで智は雫の落ちる濡れた髪のまま、ドアから顔を出した。