陽炎（かげろう） (ページ30)

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「炎症は治まりましたね。
まあ、明後日になればもう少し状態は良くなっているでしょう」

固定帯を外された時、智の眉が微かに寄せられ息を詰めるような顔になった。

「固定帯を外したら痛いと思います。入浴時以外は外さないようにしてください」
元通りに固定して、先生は立ち上がった。

「では、お大事になさってください。細かい注意事項はメモしておきましたので
後で受け取ってください。同じものを櫻井くんが持っていますので、
くれぐれも無理はしないようにね」
「う…はい」

この先生はなかなか智のことをわかってる。押さえどころが的確で感心してしまった。

帰る支度をする智を、少し後ろから黙って観察する。
右腕が動かしづらいらしく、着替えは少し不自由そうだったけど、一人で出来るみたいだし
問題なさそうだった。
手首の固定をはずしてくれって言うから包帯を解いてやる。こっちも腫れは引いていて
少し色は悪いけど湿布を貼るだけで十分そうだった。

「先生が感心してたよ。処置は完璧だってさ。さすがプロだってお前のこと褒めてたよ」
「本職に褒められるなんて、嬉しいね」
「でしょ？すごいね、マツジュン」
自分のことのように自慢げに言う智が可愛くってニヤケる。
これじゃ、翔さんと変わらないな。

「送ってくから、マネに知らせときな。きっとここへ迎えに来るよ」
「うん、ありがと」