陽炎（かげろう） (ページ22)

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２２　（Ｏ　side）ページ22

「…ニ…ノ」
ニノの後ろに泣きそうなマツジュンの顔も見えた。

「なんて無茶な事してんだよ。あんた、肋骨二本も折れてたんだぞ」
いつもより水分の多いマツジュンのぴかぴかな黒い瞳がじっとおいらを見詰めてる。
…怒ってる、よね。

「ほんと、バカなんだから」
ニノの声も震えてる。…心配させちゃったね。
「ごめん…」
おいらの左手を握ったまんま額を押し付けて動かないニノ。
撫でてあげたいけど右腕が上手く上がらなくて、左手に力を入れるとニノはそっと手を離して
おいらを見詰める。そんなニノの髪を撫でて、もう一回謝った。
「ごめんな」

マツジュンを見上げると、ふいっと視線を逸らされた。
背中を向けて部屋を出ていくマツジュンに掛ける言葉が見つからなくて、黙り込む。

それに気づいたニノがクスリと笑った。
「なに傷ついたような顔してんですか。潤くんは先生を呼びに行ってくれただけじゃん。
それとも潤くんに…なにか後ろめたいことでもあるんですかね」
「ちが…っ」
思わず大きくなる声が胸に響いて痛みが走る。
「痛いの？」
途端に心配そうな顔になるニノに首を振り、ゆっくり息を吐いて痛みを逃がす。

「だいじょうぶ…あれ…？」
何これ…

「酸素マスクだよ、今頃気付いたの？ずっとついてたよ、それ。だから息が楽なんでしょうよ」
おいらが口元のマスクに手を当てたのを見て、ニノが呆れたように笑って教えてくれた。
そうか、酸素マスクか…って、こんなの初めて着けた。
「重傷患者みてえだな…」
そう言ったらニノに額を小突かれた。
「無茶するから、ここに来たとき重症患者だったんだよ。
内臓無傷なのに肋骨骨折でショック状態になる奴なんてそうそういないって、先生が驚いてたよ」
「そっか…」

「そうですよ。こんな無茶な事をする人がいるなんて本当に驚きました。
血圧も著しく下がっていて、低酸素血症をおこしかけていましたからね」
白衣の先生がそう言いながら部屋に入ってきた。
その後ろにマツジュンもいる。