陽炎（かげろう） (ページ17)

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診察の結果、智の肋骨は二本折れていた。
この状態でダンスしたとは信じられないと先生は呆れていた。
肋骨は固定して自然治癒を待つしかない、整復は出来ない骨なんだそうだ。でもヒビが入るより折れた方が早く治るらしい。
つらいのに変わりはないだろうけど、まあ、気休めぐらいにはなるよね。

無茶をしたことによる激痛と呼吸困難でショック状態だった智は、点滴と酸素吸入で
今は落ち着いてるけど…
胸部を固定帯と云うコルセットみたいなバンドで固定され、ベッドで眠る智から目が離せない。
酸素マスクをつけた智の浅い呼吸音とそれに合わせて忙しなく上下する薄い胸。
俺にしがみついて離さなかった手も今は力なく投げ出されている。

「智くん、今夜はここで一泊だって。点滴して安静にしてたらずいぶん良くなるってさ」
翔さんが、ベッドサイドに座り込む俺の肩にポンと手を置いてそう言った。
「松潤、明日は仕事だよね」
「ああ、三時から雑誌の撮影が三本」
「そっか、俺は朝からなんだ」
「…俺さ、今夜ここに居ていいかな」
翔さんを振り返ってそう言うと、優しい顔で笑ってた。
「そう言うと思ったよ。隣のベッドが空いてるから泊まってっていいってさ。
智くんも目が覚めて病院のベッドだったらびっくりするだろうしね」
その会話を聞いて相葉さんとニノが自分たちも泊まりたいと言いだした。

「いやいや、それは迷惑だからやめようね」
翔さんは懸命に二人を宥める。
「雅紀、明日は朝早くから仕事でしょ。ロケだったんじゃない？
ちゃんと寝ないとだめだよ。ニノは…」
「俺はもう少しここに居て、それから帰るよ。明日は昼からだし、泊まんないからいいでしょ」
黙って智の左手を握り締めたニノは呟くようにそう言って翔さんを見た。
翔さんはそんなニノにもやっぱり優しく笑って頷いた。
「わかった。でも、ちゃんと帰れよ」
「ねえ、翔ちゃん。リーダー、もう大丈夫なんだよね。あんな苦しそうな顔、もうしないよね」
不安そうな相葉さんの背中を撫でながら、翔さんが力強く頷く。

翔さんが相葉さんを「雅紀」って呼ぶのは、相葉さんが精神的に不安定になったときだ。
落ち着かせたり宥めたりするときに必ずと言っていい程そう呼ぶ。
そしたら、相葉さんはすぅっと落ち着くんだ。すごいよね、翔さん。