陽炎（かげろう） (ページ16)

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車で来てたのは俺と翔さん。
「俺の知り合いに整形外科医がいるから、そこへ連れて行こう」
翔さんは智を自分の車に乗せるよう促して電話を掛ける。
「どの体勢が楽？」
半分抱えるように智の身体を支えて、翔さんの車の後部座席へ連れて行きながら訊くと
首を振り、苦しげな掠れ声で答える。
「…わかんない…」
何をどうしても痛いのに変わりはないってことか。
きつくしがみつく智の手がそれを俺に伝えてくれる。
痛いとも苦しいとも言わない智の代わりに…

「相葉さん、手伝って」
俺の腕を離さない智を、出来るだけ辛くないように後部座席に移動させたかった。
智を半分かかえたまま俺が先に乗り込み、相葉さんに智をサポートしてもらって、やっとのことで後部座席に乗り込んだ。
「…っ」
それでも体重を移動させるときに、息を詰めて痛みに耐える智の顔は蒼白だった。

翔さんが乗り込みエンジンをかける。
「相葉さん、俺の車でついて来て。前に運転したことあったから大丈夫よね」
俺はポケットを探ってキーを取り出すと窓から投げた。
それを受け取った相葉さんは俺の車に駆け寄り、急いで乗り込みエンジンをかける。
ひとりじゃ不安だと思ったんだろう、相葉さんを追ってニノが助手席に滑り込んだ。

それを見てサイドブレーキを外す翔さんに声をかける。
「翔さん、出来るだけ振動抑えてね。リーダー相当辛そうだから」
ルームミラーで智の様子を確認した翔さんが頷く。
「わかった。でも、急ぐわ」

俺の腕の中に埋もれるように身体を預けたまま、半ば意識を失った状態の智。
何ともいえない焦燥感に苛まれながら、その色を失くした顔を見つめる。

「そんなに遠くないから」
翔さんが俺を安心させようと声をかけてくれた。
「うん」
「状況は説明してあるし、着いたらすぐ処置してもらえるよ」
「そう」
素っ気ない返事しか出来なくてごめん…俺、今何も考えられない。

唇を噛みしめて、冷たい智の左手を強く握って俯いた。