陽炎（かげろう） (ページ14)

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俺たちの心配をよそに智は一曲踊りきった。
だけど…他の誰を騙せても、いつも一緒に踊ってる俺らは誤魔化せない。

しなやかに伸びる手足も軽やかなステップも為りを潜め、明らかに様子がオカシイって分かる。
踊り終わった後の汗も尋常じゃなかった。
浅く早い呼吸が智の異常を皆に知らせている。

ニノが踊り終わった智に駆け寄り、泣きそうな瞳で、それでも笑顔を作って寄り添う。
カメラが俺らから司会者へ切り替わったのを確認して、ニノの反対側から肩を抱くように
智を支える。
それを見た翔さんと相葉さんは智を隠すように前を歩いてにこやかにエンディングの立ち位置へ移動する。

「っ…はぁ、は…っ」

俺たちに隠す余裕のなくなった智は翔さんの背中に隠れて喘ぐように浅い呼吸を繰り返し、
俯いた蒼白な顔は苦しげだった。
他の出演者に気付かれないようにニノは智を挟んで俺に笑顔で声を掛ける。
まるで智もその会話に参加してるかのように…
機転の利くニノのお陰で何とかエンディングを乗り切る。

誰にも見咎められないように、出来るだけ不自然にならないように気を配りながら、
俺たちは番組終了と同時に急いで智を楽屋へ連れ帰った。

「どこが苦しい？」
急いで衣装を脱がせようと手を掛けたら、智がその手を痛めていない左手で強く掴んだ。
「待って…っ…」
苦しげに眉根を寄せて掠れた声を絞り出す。
「ごめん…そっと…右腕…上がらな…」
「わかった」

皆が息を呑んで見守る中、俺は慎重に左肩から智の上着を脱がせ、シャツのボタンをはずして
絶句した。右の脇腹が赤黒く腫れていて呼吸すらままならない様子だった。
「…っ」
皆がそれを見て凍りつく。肋骨を骨折してる…？