陽炎（かげろう） (ページ1)

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あの日以来、俺は大人しく今まで通りの距離感で智の傍に居る。
…いや、ちょっと縮まったような気もしてる。
以前より、頼りにされてる感じがするのはきっと気のせいじゃない。…と思いたい。

智のこととなるとからっきしだって翔さんのこと笑ってたけど、ここんとこ俺も自信ないかも。
それどころか、智が翔さんを見るたびにイライラが募る。
何かある度、智は翔さんを見る。確認だったり伺いだったり、その時によって
ニュアンスは違うけど、それはずっと以前からの、智にとっては癖みたいなもんだった。

それが最近気になってしょうがない。そんな智に対する翔さんの態度にも
以前みたいに笑えない…翔さんの、智にだけ見せる愛しげな優しい眼差しが
胸をざわつかせるんだ。

…もしかしてこれが巷でいうところのヤキモチか？

「潤くん、怖いよ」

ニノに突っ込まれて我に返る。眉間にしわが寄ってたらしい。
「え、ああ…ごめん」
「何、ずいぶん素直じゃないですか」
大げさに驚いて見せるニノ。人懐っこい子犬みたいな眼でじっと俺を見つめる。
どんなふうに見えてるか知ってて、そういう顔すんだよな。
「なんだよ。俺だってそういうときもあんだよ」
ふいと視線を逸らして誤魔化す。
けど、きっとそんなのは無駄な抵抗…
「ふ～ん」

ニノは勘がいい。イヤんなるぐらい鋭い。

「…大野さんと何かあったんだ。…それとも、翔さんと？」

ほら来た。にこにこ笑ってじっと俺を見つめる。楽しそうな顔しやがって、
まったくとんでもない奴だ。

「ここんとこ、大野さんの様子がおかしいんですよねぇ」
相葉さんとじゃれてる智にちらりと視線を移して、ニノは呟いた。
「なんか違う感じがするんだよね、潤くんに対してさ。…それって気のせい？」

何かあった、その張本人の俺でも自身がない程度の智の変化に気付いたニノって…
俺のライバルは意外に多いってことか。

でも、ニノのそれはちょっと違う気がしてる。俺が智を想う気持ちとは違う色合いの想いが
ニノにはある、と思う。
何て言えば納得するだろう。まさか正直に言える訳ないしな。

そんなこと考えてたら当人がやって来た。