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「…」
ショウは言葉を失くし、ただ黙ってカズを見つめている。
そして両手で顔を覆い、深くため息をついた。
「…きついな」
「そうだね。俺なんか考えられないや…そんな状況。
でも、サトシは突きつけられたんだ、突然」
「ああ」
カズは琥珀の瞳を陰らせ、ショウを覗き込む。
「ねえ、ショウさん。俺たち、何をしてあげられるんだろう…
あの人、とんでもなく深い闇に呑み込まれてしまうよ」
「そんなことないさ」
カズの肩にそっと手を置き、ショウが明るく笑う。
「サトシくんはそんなに弱くない。
それはカズが一番良く知っているんじゃないのかい？」
サトシとカズは兄弟以上の絆で結ばれているとショウは思う。
「それに…サトシくんもわかっていると思うよ。
独りで抱え込んでいるとカズが悲しむっていうことを。
なんだかんだ言っても一番分かり合えるのはカズだって、知っていると思うんだ」
カズにはその自覚がある。
それは一方的な感覚で、サトシにそれが存在するのかは不明だが、カズの中には確かにあるのだ。
ショウに知る術はないが、
寄る辺ない幼少時に他人の中にいたカズが生きていくために、精神の均衡を保つために、
無意識にサトシの手を掴んだ瞬間にその絆は結ばれたのだった。
――かず
――カズ
――だいじょうぶ
――ずっといっしょだよ
幼い頃の記憶。
――かず
サトシは無邪気な笑顔でカズを呼ぶ。
――ここにいて…いいの？
――おいでよ、いっしょにあそぼ
「…なんだか、ショウさんにはつい弱音を吐いちゃうんだよな。なんでだろ」
「それはたぶん僕が人格者？だからじゃないかな」
「ぷっ…なんでそこ疑問形なの」
思わず吹き出したカズに目を細めてショウが笑う。
「まあ、あんまり深刻に考えないことだよ。
サトシくんは心配かけないように隠そうとするから、心配そうにしちゃいけない」
ショウの言葉に目を丸くしたカズは、またしても吹き出した。
「俺らの中で一番心配性のショウさんが、それ言うんだ」
ショウは、ばつの悪そうな顔で苦笑する。
「まあ、明日の国葬が済んだら少し落ち着くし、
しばらく静観する方がいいと思う。まずは僕が自重するよ」
三日月の儚い光が薄絹のようにそれぞれの想いを優しく包み、夜は静かに更けてゆくのだった。
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ＡＫＩＲＡ(プロフ) - ミルクさん» ミルクさん、コメントありがとうございます〜楽しんでいただけてとっても嬉しいです。このお話に三男は出てこないし、次男もちらっとでただけ（汗）ミルクさんのご贔屓は出てきましたか？他のお話も是非！そしてよかったら感想を教えてくださいね。 (2020年9月12日 22時) (
レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
ミルク(プロフ) - とても楽しくて一気見しちゃいました！あとの二人がいつ出てくるのもとても楽しみになりました！更新頑張ってください！ (2020年9月10日 9時) (レス) id: 40fefb6cd8 (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - bunkichiさん» 過去編長かった〜（汗）我ながら呆れてしまいます。描きたいことがたくさんあって、欲張るからこんなことに…このパートもあと少しで一杯ってところでやっと現在っていう（笑）この後、少しでも隊長らしいところをお届けできるよう頑張ります!! (2020年9月6日 23時) (レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
bunkichi(プロフ) - AKIRAさん、こんにちは。過去編終わりましたね。最初からまた読み直して、過去編は1年前の出来事、レックスさんに「非業の死」と言われて動揺しちゃったところにちゃんと繋がりましたよ。親衛隊長なのに小柄ですごく可愛らしい智くんが目に浮かびます。ステキです。 (2020年9月6日 7時) (レス) id: b3195af20e (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - bunkichiさん» bunkichiさん、こんばんは〜ちょっと明るい感じになりましたが、もう少しで過去編終わります。が、このパートに入りきらないことが確定〜〜！少し入りきらない（泣）過去編だけの話にするべきだったかなぁ…今更だけど（笑）ということでもうしばらく続きま〜す。 (2020年8月22日 1時) (レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2020年7月19日 1時
