５１ ページ1
・
ベッドサイドに腰掛けて智の額に手を当てる。
熱はまだかなり高いな。
麻酔がまだ効いてるからしばらくは目を覚まさないだろうって言われた。
掛布からのぞく智の指先に指を絡めてそっと手を握る。
いつもは少し冷たい智の手が熱のせいですごく熱い…
頬の擦り傷は綺麗に消毒され真新しいガーゼが当てられて、泥がついていて気付かなかったけど左のこめかみにも痣ができていていた。
高熱のせいだよな、呼吸がずいぶん早い。
薄っすらと開いた唇はいつもとは違ってカサついていて、思わずそっと指でなぞる。
「苦しいか？ゴメンな、智。
俺が一人で出て行ったりしなかったら、こんなことにはならなかったのに…」
智はおそらく別荘近くのハイキングコースから足を滑らせて滑落したんだろう。
この雨と落ち葉のせいでかなり滑りやすくなってることは確かだ。
だけど、何だって雨の中…？
「なあ、何で外に出たりしたんだ？」
「あなたを探しに出たんですよ、松本さん」
後ろから聞こえた答えに振り返ると、カウンセリングの藤木先生が戸口に立っていた。
「藤木先生…」
病室に入ってきた先生の白衣は雨に濡れて、裾にはたくさんの泥はねがあった。
智を探してくれてたんだ…
藤木先生は智の状態を確認した後、俺に別荘で何があったのかを教えてくれた。
そして
智を一人残して出て行った俺を責めることもしないで、押し黙る俺をただ優しいまなざしで見つめるだけだった。
「先生、俺の話を聞いてくれませんか？」
「もちろん構いませんよ。別室を貸してもらいましょうか？」
「いや、ここでいいです。もう二度と智を一人にしたくないから」
「わかりました。それでは少しの間、ここへは誰も来ないようにお願いしてきましょう」
さすがカウンセリングの先生、気配りが自然で細やかだな。
そんなことをぼんやり考えながら、先生の背中を見送った。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 223人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - あんずさん» あんずさんそう言ってもらえて嬉しいです。うちの長男が可愛いのはきっと甘々な五男のせい。どんなに恥ずかしがってもお構いなしの彼がそんな長男を作ってます（笑）他のメンバーだとそれぞれに少しずつ違う反応になると思うので（笑）次は天然コンビです。お楽しみに！ (2019年4月30日 10時) (
レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - bunkichiさん» わーい！伝わってよかったぁ〜！いろいろあって苦しかったり辛かったりしても、最後は五人で笑ってる。そんな彼らが大好き。buｎkichiさんはいわゆるカレンダーどおりに仕事なのかぁ…頑張って〜その間にまたほのぼのしてもらえるように次のお話準備しておきます（笑） (2019年4月30日 10時) (レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
bunkichi(プロフ) - AKIRAさん、めちゃくちゃほのぼのできました〜。次は天然か〜。楽しみ！今日から3日間仕事です。頑張ってくるね〜。 (2019年4月30日 5時) (レス) id: 79f31dd43f (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - AKIRAさん、完結ありがとうございました。2人の気持ちが穏やかに落ち着いて本当に良かったです、智くんが可愛すぎて。AKIRAさんのお話大好きです。 (2019年4月29日 16時) (レス) id: 7778cfafdc (このIDを非表示/違反報告)
bunkichi(プロフ) - 大切なこと、書き忘れてました。今回もと〜ってもステキなお話でした。やっぱりAKIRAさんのお話大好きです。 (2019年4月29日 11時) (レス) id: 79f31dd43f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2019年4月1日 0時
