６ ページ6
・
「……大切な人、それは俺のすぐ傍で笑ってる人たち。」
一瞬の逡巡のあとサトシは迷いのない透き通った声を放った。
その答えに、そこにいる騎士や侍従が一瞬ざわめき、カザンイン公爵がひと睨みでそれを黙らせた。
騎士たちは皆、王のために国のために命を捧げる誓約をしてここにいる。
サトシもその誓約をしているのだから、答えはひとつのはずだった。
彼らにとって国王以上に大切な存在などあってはならないはずなのだ。
「そうか、良くわかった。では、白虎騎士サトシ。この後、室内訓練場まで来るがよい。」
周りを動揺させたサトシの答えにも眉一つ動かすことなく、タキ王はそう言い残し悠然と退室していった。
カザンイン公爵は信じられないモノを見るかのように蒼白な顔でサトシを凝視すると、さっと視線を逸らし険しい表情のまま何も云わずタキ王に続いて退室した。
・
不機嫌そうな騎士に小突かれるようにサトシが連れて行かれたのは、王宮内にある小規模な室内訓練場だった。
普段は剣を嗜む程度の貴族の子弟が使う訓練場で、天井が高く、壁際には見物席のような場所と休憩所もある。
十分試合が出来る広さを持ったその訓練場では、親衛隊長のライと副官のイールがサトシを待っていた。
短く刈った赤銅色の髪に深緑の瞳をした、一目で強者の戦士と分かる風貌のライ。
その横に立つのはライよりひと回り大柄で厳つい印象の男で細い眼は薄い青、そしてこちらも短く刈り上げた金髪のイール。
二人ともサトシが見習いだった頃からの顔見知りだった。
「やあ、サトシ。待っていたよ。」
ライは笑顔でサトシを迎えた。
「ライ。」
サトシは嬉しそうにそんなライに駆けよる。
それもそのはず、まだほんの子どもだったサトシに剣の持ち方から足捌きまで、すべての基礎を教えたのは他ならぬライなのだ。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 200人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - ラヴリィさん» ラヴリィさん、コメントありがとうこざいます。このソラリスの物語は設定を作り込んでいるので世界観をわかってもらえてすごく嬉しいです。本編は長い物語ですが、アップできたらいいなと思って手直し中です。アップ出来たらその時はまた読んでくださいね。 (2018年12月20日 0時) (
レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
ラヴリィ(プロフ) - 他の作品を読ませて頂いてますがいつも読み逃げですみません。はじめて投稿させて頂きます。世界観が出来上がってる作品なんですね。それが読み手にワクワク感をもたらしていて、続きを知りたい。その先に何が？と思ってしまいます。術中にハマったのでしょうか（笑）。 (2018年12月19日 23時) (レス) id: fe9e090000 (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - bunkichiさん» buikichiさん、次はいちごにしましょうか（笑）色恋沙汰はぜひ「いちご」で！！花冠の騎士は本編の補足というか、始まりのお話だったので、物足りなさがあるかもしれないです。外伝２はもう少しいろいろあります、長男が（笑）こちらは来年アップできればと思ってます。 (2018年11月27日 23時) (レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - 真智さん» 真智さん、初めまして。コメントありがとうございます。本編に興味を持ってもらえて嬉しいです〜本編はたくさん手直しするので、ゆっくりやっていこうと思っています。アップするかどうかは出来映え次第ですが（汗）次のお話は「いちご」かなぁ〜って思ってます（笑） (2018年11月27日 22時) (レス) id: 4512a7e1db (このIDを非表示/違反報告)
bunkichi(プロフ) - AKIRAさん、完結お疲れ様です。正直言うと、え？もう完結？って気分。とてもステキなお話だったので、物足りないくらいです。ついつい、色恋沙汰に発展することばかり期待してしまって、情けなくなります、自分が。外伝2も楽しみにしてます。 (2018年11月27日 20時) (レス) id: 79f31dd43f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2018年11月5日 9時
