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「あ、動いた。サトシさんここ」
マイさんがサトシの手を左上へと動かした。
「ほら、分かる？足を突っ張ってるのよ」
「ほんとだ。なんか堅いのが当たる」
「たぶん踵かしら。サトシさんの声が聞こえたのよ。きっと返事をしたんだわ」
「ふふ、元気だね」
「ほんと。きっと元気に生まれてくれるはず」
サトシは掌に感じる小さな命の証をそっと撫でて瞳を潤ませた。
「…なんか、感動しちゃった。生きてるってすごいことなんだね」
「みんなそうやって生まれて来たんだよ」
マサキが感慨深げにそう言ってユイを抱き上げた。
「じゃあ、行くね」
「気を付けてな。担当医は俺の知り合いの奥さんで、すごく腕のいい産婦人科医だから安心して任せるといい。少し日本語も話せるし、きっと力になってくれるよ」
「ジュンさん、何から何までありがとうございます」
「気にしないでよ。言ったでしょ、コネは使うためにあるんだって」
「そうそう、気にしない気にしない」
マサキが茶化す。
「お前がいうな」
「あはは。あ、迎えが来たみたいだよ」
玄関の中まで聞こえてくるヘリコプターの音はだんだんボリュームを増して、やがて爆音になった。ここから目的の街まで身重のマイさんには辛い旅程になるからと、医療用のヘリをカズが用意してくれたのだ。
軽い電磁波過敏症のユイのためにもきちんと配慮されている。
サトシは近づくことが出来ないから窓から見送り、俺は荷物を持ってマサキの後に続いた。
「じゃあな、マサキ。気を付けてな」
「ジュンこそ、サトちゃんのこと頼んだよ」
「わかってるよ。こっちのことは気にしないで、ちゃんとマイさんとユイのこと見ててやれよ」
「うん。じゃあ行って来ます」
ユイさんは付き添いの看護師の手助けを受けてヘリに乗り込み、爆音に怯えるユイをしっかり抱きしめたマサキがその後に続く。荷物を渡して俺が下がるとドアが閉められた。
そして爆音に似合わず緩やかに陸地を離れたヘリコプターは、ゆっくり空へと上昇し東へ向かって飛んでいった。
「行っちゃったね」
部屋に戻ると、サトシはまだ窓から空を見上げながら小さく呟いた。
「そうだね。しばらく会えないな」
「うん」
もとは二人で住んでいたこの家だったけど、妙に広く感じるのは俺だけじゃないんだろう。
それから数日、サトシは所在なさそうにぼんやりと空を眺めていた。
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dango3104(プロフ) - お返事ありがとうございます(〃ω〃)休止中の心の隙間を素敵なお話を一気読みする事で何とか日々を乗りきっておりますm(_ _)m時にニヨニヨし、時に涙し、家族に不審がられようとも気にせず(￣∀￣)何とか智さん不足を補いつつ生きとります(ノ_＜)新作、楽しみにしてます (2022年4月6日 17時) (
レス) id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - dango3104さん» dango3104さん、コメントありがとうございます！最近は全然UPできていないのですが、何年も前のお話に新しいコメントを頂けるなんて感無量です！また書き始めているので新作ＵＰできたらぜひ読んでくださいね。 (2022年4月5日 23時) (レス) id: 30a2c7b7ee (このIDを非表示/違反報告)
dango3104(プロフ) - 最愛同様に深い愛ですね・・・涙が止まらないです (2022年3月28日 17時) (レス) @page29 id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2017年6月10日 12時
