２７ ページ27
「カズやショウくんに会わせてもらって、おいらも少しは大人になったでしょ。
思い返してみれば身体の成長が止まった時に、他の全部も一緒に止めてたような気がする」
「…何も考えないようにしてたんだ、それが一番楽だったから。何も考えないで何も感じないふりして、毎日同じことを繰り返してるだけだった」
もうベッドから起き上がることも出来ないサトシは、痩せた手を伸ばして俺の手に重ねると深くため息をついた。
「疲れたんだろ、少し休んだ方がいい」
「ううん、大丈夫。おいらね、ジュンに聞いて欲しいことがあるの」
力ない声だけどしっかり話す様子からすると、今日は調子がいい方なんだろう。
サトシが楽に話せるように少し身体を起こしてやる。
「前にね、ジュンの子供が見たいっていったの憶えてる？」
「ああ、夏にピクニックしたときだろ。憶えてるよ」
「おいらね、ジュンの子ども見るのは諦めた」
「…なんでだよ、見込みないから？」
「そうじゃないよ」
サトシはふふっと笑って小さく首を振った。
「ねえ、ジュン。結婚しなよ」
「たった今、諦めたって言ったばかりだろ」
「違うよ、そうじゃなくてね」
サトシが身じろぎして俺の方へ身体を寄せてきたから、少し前かがみになって近づいてやると、まるで秘密を打ち明けるみたいに囁いた。
「おいらね、ずっと思ってた。ジュンと家族になりたいって。それでね、考えたんだ。
ジュンが結婚したら、おいらジュンの子どもに生まれてこようって…」
「元気な身体で生まれて来るよ。そしたら、ここへ来た頃みたいにおいらと一緒に森を探検しようよ。約束だよ。だから…待ってて」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 175人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
dango3104(プロフ) - お返事ありがとうございます(〃ω〃)休止中の心の隙間を素敵なお話を一気読みする事で何とか日々を乗りきっておりますm(_ _)m時にニヨニヨし、時に涙し、家族に不審がられようとも気にせず(￣∀￣)何とか智さん不足を補いつつ生きとります(ノ_＜)新作、楽しみにしてます (2022年4月6日 17時) (
レス) id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - dango3104さん» dango3104さん、コメントありがとうございます！最近は全然UPできていないのですが、何年も前のお話に新しいコメントを頂けるなんて感無量です！また書き始めているので新作ＵＰできたらぜひ読んでくださいね。 (2022年4月5日 23時) (レス) id: 30a2c7b7ee (このIDを非表示/違反報告)
dango3104(プロフ) - 最愛同様に深い愛ですね・・・涙が止まらないです (2022年3月28日 17時) (レス) @page29 id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2017年6月10日 12時
