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「なに、どうかしたの？」
俺の顔を見るなり、開口一番そう言ってカズは眉をひそめた。
「ああ、お疲れ。仕事は片付いた？」
「まあね。休暇だって言っても決裁は俺がしなくちゃなんないから、メールチェックは欠かせないし。それより、この人がどうかしたの？ずいぶんと深刻な顔してるじゃん」
カズが地下から戻った時にはサトシは眠っていて、昔と変わらない幼い寝顔にはさっきまでの不安の影もなく、気づかれることはないとタカをくくってた。
でもいつもと違うのは俺の方で…鋭いカズが見逃すはずがなかったんだ。仕方なく俺はさっきのやり取りをかい摘んで聞かせた。
もちろん、カズには言わないでとサトシに口止めされた例の件には触れずに、だったけど。
「ふうん」
気の無い返事をしてサトシが眠るソファの前に座り込むと、じっとその寝顔を見つめてカズは黙り込んでしまった。
「まだ認可の降りてない新薬があっただろ、あれを試してみたいんだけど臨床試験ってことでなんとか用意できないかな」
「今からは無理だろうね。
研究所はクリスマス休暇で閉まってるし、ここへ持ってこさせるには天候が悪すぎるよ。
それに…ジュンくん、わかってるんじゃないの？
この人にはもう副作用に耐える体力がないってことをさ」
悲しそうな笑みを浮かべてカズが俺を見上げる。そうか、とっくにカズも気づいてるのか…
「俺はさ、この人が望むなら何でもするよ。だからホルモン異常を何とかしようと全面的にバックアップしたつもりだし、ジュンくんを始め、たくさんの優秀な科学者がいろんな角度から研究して、その過程で素晴らしい薬がいくつも開発された。だけどそれは残念ながらこの人に有効な薬じゃなかった」
冷静なカズに俺の鼓動が早まる。
「この人は今なにを望んでるの？自分でも…もう気づいてるんじゃないの？」
俺に向ける眼差しには、俺の心を見透かそうとするみたいに強い光が宿っている。そんなカズの視線に思わず頭に血がのぼった。
「なんでっ…なんでお前はそんなに冷静なんだよっ」
「ジュンくんはさ、この人の主治医じゃないの？
一番冷静でいなきゃいけないのは、ほんとはジュンくんだろ」
カズは切なげな顔でソファで眠るサトシに視線を落とし、それから俺をまっすぐに見つめた。
「俺はずっとこの人の治療には関わったけど、直接向き合ってきたのはジュンくんだ。
俺がこんなこと言わなくたってわかってるんだろ。ただそれを認めたくないだけじゃん」
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dango3104(プロフ) - お返事ありがとうございます(〃ω〃)休止中の心の隙間を素敵なお話を一気読みする事で何とか日々を乗りきっておりますm(_ _)m時にニヨニヨし、時に涙し、家族に不審がられようとも気にせず(￣∀￣)何とか智さん不足を補いつつ生きとります(ノ_＜)新作、楽しみにしてます (2022年4月6日 17時) (
レス) id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - dango3104さん» dango3104さん、コメントありがとうございます！最近は全然UPできていないのですが、何年も前のお話に新しいコメントを頂けるなんて感無量です！また書き始めているので新作ＵＰできたらぜひ読んでくださいね。 (2022年4月5日 23時) (レス) id: 30a2c7b7ee (このIDを非表示/違反報告)
dango3104(プロフ) - 最愛同様に深い愛ですね・・・涙が止まらないです (2022年3月28日 17時) (レス) @page29 id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2017年6月10日 12時
